IT(情報技術)やエンターテインメントの知見を注ぐ「SONYカー」の登場は、うわさされる米アップルカーの動きに先行するもので、自動車業界の地殻変動を映し出すものとして注目されてきた。

 だが、自動車の生産拠点を持たないソニーにとって、「SONYカー」の実現にはパートナー戦略が欠かせない。

 実際、コンセプトカー「VISION-S」の車体製造は、オーストリアのマグナ・シュタイヤー(ファブレス)に委託している。だが、量産となると安全対策などの点からOEM(既存自動車メーカー)との提携が現実的だ。

 その「解」がホンダとの戦略提携だったのだ。

「昨年の夏頃にホンダからソニーさんに持ち掛けて、モビリティの将来を検討するワークショップがスタートした。そこで化学反応のような大きな可能性を感じ、21年末に吉田社長と話して共有し検討を加速した」と、三部社長はホンダからの声がけでこの協業がスタートしたことを明らかにした。

 吉田会長兼社長も「ソニーにとって自動車は新領域であり、パートナーが必要だった。昨年末に三部社長とトップ同士のコミットメントを得た。ホンダの企業文化に“走る”“飛ぶ”の技術力があり、ホンダは頼もしいパートナーだ」とホンダと手を組むことへの期待感を強調した。

 両社は昨年の夏にワークショップを始動させ、21年末にはトップ同士のコンセンサスを経ており、22年初頭のCESでのソニーEV事業参入の表明と同時に一気に表面化を進めたことになる。