ロシアのウクライナ侵攻で転換した世界秩序、長期投資戦略「3つのポイント」Photo:PIXTA

ロシアのウクライナ侵攻で世界秩序は転換した。コストの増加、インフレの高止まりが常態化する。新しい世界秩序の下ではこれまでとは違う長期投資戦略が求められる。その3つのポイントを解説する。(クレディ・スイス証券株式会社 プライベート・バンキング チーフ・インベストメント・オフィサー・ジャパン〈日本最高投資責任者〉 松本聡一郎)

グローバル化の時代は終わり
多極化世界が到来する

 分断が広がっている。5年前クレディ・スイスが長期投資テーマを提唱した際、着目したのは先進諸国での社会の分断だった。

 人口動態の変化(労働人口減少と少子高齢化)と貧富の格差拡大が生み出している分断である。このとき、世界経済の仕組みが多極化へとゆっくりシフトしていくと考えていた。

 COVID-19のパンデミックによる変化を考察した際、着目したのは価値観による世界の分断だった。権威主義的な国と民主主義的な国でパンデミックへのアプローチが異なり、価値観の違いが世界の分断を進める可能性に注目し、多極化へのシフトが加速すると考えた。

 ロシアがウクライナへ全面侵攻したときは、世界の分断が不可避となったと感じた瞬間だった。ベルリンの壁崩壊以降、米国を中心とした自由主義経済の体制の下、世界が緩やかに相互依存を高めてグローバル化が進んだ。

 しかし、ロシアのウクライナ侵攻で、この世界秩序は転換してしまったと考えている。ロシアのプーチン大統領は、ロシアがエネルギーやコモディティー資源、および軍事力に基づく大国としての地位を再獲得することを目指しているのだろう。

 これは、欧州はもとより世界の安全保障体制に大きな影響をもたらす。中国など他の大国は、この紛争の展開や欧米諸国の反応を注意深くチェックしている。しかし、世界がグローバル化の時代に戻ることはなく、多極化世界が到来する。