金相場の高値はいつまで続くか、金利上昇でも高止まりする理由Photo:PIXTA

金相場は3月に史上最高値に迫った後もやや下落したものの高値圏にある。FRBがゼロ金利を政策に終止符を打ち利上げに転じる中、今後も高止まりを続けそうだ。その背景を探る。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

3月に最高値に迫った後
下落するも依然高値圏

 3月上旬に金相場は1トロイオンスあたり2000ドルを上回り、史上最高値に迫った。その後、原油相場の上昇一服への連動などから頭打ちとなっているが、依然1900ドル前後と高値圏にある。

 振り返ると、2021年11月中旬には1876.90ドルと5カ月ぶりの高値を付けた。米CPI(消費者物価指数)の上振れでインフレ懸念が強まってインフレヘッジとしての金買いが強まった。

 加えて、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が利上げに慎重な姿勢を示し、利上げ観測が出ていた英イングランド銀行が政策金利を据え置くなど各国中央銀行による低金利維持姿勢が意識されたことも金利の付かない金の支援材料になった。

 その後は、下落に転じた。下旬には、バイデン米大統領が22年2月で任期切れとなるパウエル氏を再任する方針を表明したことが金売り材料になった。対抗馬のブレイナード理事はよりハト派的だと目されていたためだ。長期金利上昇やドル高につながって金価格を抑制し、23日には1800ドルを下回った。

 26日には、新型コロナウイルスの「オミクロン株」の出現を受けて、投資家のリスク志向が低下し、安全資産の金は一時、1815.26ドルまで買い戻されたものの、利益確定の売りや商品相場全般の下げへの連動から上げ幅は抑えられた。また、30日には、パウエルFRB議長が量的緩和の縮小ペースを加速する可能性を示唆したことなどが嫌気された。

 このようにFRBが金融引き締めに転じ始めたにもかかわらず、金相場はなぜ高値圏で推移しているのか。次ページ以降でその背景を探る