発売直後から大きな話題を呼び、中国・ドイツ・韓国・ブラジル・ロシア・ベトナム・ロシアなど世界各国にも広がった「学び直し本」の圧倒的ロングセラーシリーズ「Big Fat Notebook」の日本版が刊行された。本村凌二氏(東京大学名誉教授)「人間が経験できるのはせいぜい100年ぐらい。でも、人類の文明史には5000年の経験がつまっている。わかりやすい世界史の学習は、読者の幸運である」、COTEN RADIO(深井龍之介氏 楊睿之氏 樋口聖典氏・ポッドキャスト「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」)「ただ知識を得るだけではない、世界史を見る重要な観点を手に入れられる本! 僕たちも欲しいです」、佐藤優氏(作家)「世界史の全体像がよくわかる。高度な内容をやさしくかみ砕いた本。社会人の世界史の教科書にも最適だ」と絶賛されている。本記事では、全世界700万人が感動した同シリーズの世界史編『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からの世界史』より、本文の一部を抜粋・紹介します。
アメリカの大恐慌の原因
第一次世界大戦によって、参戦した国々は財政難に陥ってしまう。1920年代終盤を迎えるころには、世界経済はずいぶんと冷え込んでいた。賃金は下がり、販売は低迷し、農産物の市場はうまく回っていなかった。
イギリスとフランスは、アメリカに対する巨大な借金を抱えていた。両国は、ドイツがイギリスとフランスに対して負っている賠償を通じて、アメリカへの支払いをドイツに肩代わりさせようとしたけれど、ドイツもドイツで現金不足に陥っていた。
だから、ドイツは、アメリカから借りたお金でイギリスとフランスへの賠償をおこない、そのお金がアメリカに支払われる、という流れになっていたのだ。この貸し借りの循環が、問題を引き起こしてしまう。
第一次世界大戦の結果、アメリカはヨーロッパと比べてずっと景気がよくなった。戦時中、アメリカ政府には軍需品が必要だったので、仕事がたくさん生まれていた。
1920年代になると、アメリカ人は株式投資を始め、信用買いを始めた。ところが、ヨーロッパの人々には、アメリカ製品を買うお金なんてなかったから、輸出市場は低迷してしまう。ヨーロッパ諸国が借金の返済に困ると、アメリカの銀行は次々と倒産した。
すると、1929年10月29日、アメリカの株式市場が暴落し、深刻な失業が生まれてしまう。この経済危機のことを、世界恐慌という。
ローズヴェルトのニューディール
1933年の大統領就任から100日足らずで、アメリカのフランクリン=D=ローズヴェルト大統領は、経済不況に立ち向かうため、ニューディールという政策を打ち出した。その内容は次のようなものだった。
・連邦緊急救済局:失業者の支援
・農業調整法(AAA):農家を支援するための食料価格の引き上げ
・公共事業局:公共事業の支援と新しい仕事(橋、郵便局、空港、道路の建設)の創出
1935年の第二次ニューディールでは、公共事業促進局と呼ばれる公共事業プログラムが発足した。このプログラムは連邦緊急救済局に代わり、300万人以上の職を生み出したという。
第二次ニューディールでは、失業保険や社会保障制度もつくられた。ローズヴェルトは、銀行制度を改良して、労働組合の権利を拡大することにも取り組んだ。確かにすごいことだけれど、その3年後もまだ、1100万人近いアメリカ人が失業したままだったのだとか。
切羽詰まった国々と暴君の誕生
不況から立ち直るため、イギリスは、均衡予算と保護関税という昔ながらの保守的な政策を用いた。また、財政削減政策をとり、基本的に不必要な出費を切り詰めることにも励んだ。ほかのヨーロッパ諸国は、回復に取り組むなかで悲運に見舞われた。
切羽詰まった国々は、助けを約束する指導者たちに目を向けたけれど、そうした人々がやがて暴君となってしまう。ドイツでは、国民(国家)社会主義ドイツ労働者党、通称ナチ党の指導者として、アドルフ=ヒトラーが権力を握った。ヒトラーは、第一次世界大戦でのドイツの敗戦の責任を、共産主義者やユダヤ人に負わせ、彼らとの戦いを呼びかけた。
ドイツの人々は、お金を借りている国々を攻撃することが、借金から逃れるひとつの道だとわかっていたのだ。こうして、第二次世界大戦の火ぶたが切られようとしていた。
(※本原稿は『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からの世界史』を抜粋・再編集したものです)