実際の評価段階においては、仕事の成果を評価する業績評価と同じくらいに、行動評価も重視されている。ユニークなのは、社員が上司から一方的にフィードバックを受けるのではなく、同じプロジェクトに関わる同じ階層のメンバー数人からも改善点や評価などの意見をもらえる、「ピアフィードバック」が行われていることだ。

 部下から上司へのフィードバックも行われている。マネジャーは年2回のマネジャーサーベイを通じて、部下から忌憚のないフィードバックを受けている。また年に一度、全社員が上司やグーグルでの会社生活全般を評価する「グーグルガイスト」という調査も行われている。上司と部下がお互いにフィードバックを行うことで、組織の課題や個々の目標管理がより可視化されるのだ。

「1on1やフィードバックが職場に根付いているのは、社員のミッションが明確であり、具体的な相談をしやすいという働き方によるところも大きいのではないか」と谷本氏は分析する。

新たなビジネスを生む
「20%ルール」とは

 社員の自己啓発やキャリアサポートもさかんだ。ユニークなのは「20%ルール」という取り組みで、社員は勤務時間の20%を自分自身のやりたいプロジェクトに費してもいいというものだ。会社で募集されているプロジェクトに参加しても、自ら新しいプロジェクトを立ち上げて仲間を募集してもいい。これは社内を活性化させ、新しい人との出会いやビジネスチャンスを生み出すことに一役買っている。

 実はあの「Gmail」なども、この取り組みから生まれたサービスだという。最近では、高齢者のデジタル化を進めるプロジェクトの人気が特に高い。コロナ禍には20%ルールの考え方をもとに、全国の自治体やパートナー企業をグーグル社員として受け入れ、オンラインを介して週1~2日、3カ月間程度働いてもらう「Work @ Google 20%」(ワーク・アット・グーグル)を実施。実務を通じて、デジタルスキルや働き方の価値観などを学んでもらったという。

 そのほか、社内ではグーグル社員による多くの研修が社員同士で実施されている。社内で講師の資格を取得すると、仕事に関するナレッジから趣味に至るまでさまざまな研修を開催して人に教えることができる。研修の情報は社内の「Grow」というサイトで紹介されており、スキルアップしたい社員はいつでも参加することができる。