「行き過ぎた円安」でも元に戻るとはいえない理由写真はイメージです Photo:PIXTA

物価変動を考慮すると円相場が50年ぶりの円安となっている。今の円安が行き過ぎだから元に戻るだろう、と考えるのは危険だ。その理由を説明しよう。(経済評論家 塚崎公義)

円相場は実質的に
50年ぶりの円安

 円相場は、実質的に50年ぶりの円安となっている。「実質的に」というのは物価上昇率格差を考慮して比較すると、という意味だ。

 50年前は1ドルが300円程度だったが、その後諸外国の物価が日本よりも上がったことによって、「日本製品の輸出しやすさは50年前と同程度」「日本製品と外国製品の価格を比較すると、50年前の比率とおおむね同じ」といったことになっている。

 前半の25年間は物価上昇率格差を上回る円高が進行し、日本製品の輸出が厳しくなっていった。その後25年間は物価上昇率格差が続いているのに為替レートがおおむね横ばい圏で推移したため、輸出の厳しさが解消されていったのだ。

 言い換えると、現在の為替レートは過去50年の平均と比べてはるかに円安となっている。その意味では、「円安が行き過ぎだ」と言って間違いない。

「円安だから戻るだろう」と
考えるのが危険な理由

 為替レートの基本は、理屈の上では日米の物価水準が一致することにある。そこから大きく逸脱した為替レートは大幅な貿易収支不均衡をもたらすため、為替レートが自動的に修正されることになる。