極端な場合、新入社員でも
マネジャーになりうる

 また、これまで管理職になるには筆記試験や面接などに合格していることなどの条件があったが、新制度ではポジションに求められる要件を満たせばアサイン可能になった。「極端な場合、新入社員でもマネジャーになりうる」(矢野氏)。このほか、社内の別の部署で短期間働く社内インターンや、自ら案件を提案してチャレンジする仕組みもある。

 同社が重視するキャリア自律という観点では、毎月上司と1on1のミーティングがあり、目下の仕事内容や今期の個人目標の相談はもちろんのこと、将来的なキャリアの相談もなされている。2019年には、人財マネジメントシステムで全社員の統一データベースを整備しており、上司とのキャリア相談の履歴が蓄積され、本人のキャリアプランを考慮し、マッチングしたうえでの異動や配置が行われている。また、同社のキャリア相談室には、キャリアコンサルタントの資格を取得した社員が常駐して、これまで約1300人もの社員の相談を受けている。

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 キャリア形成や成長を支えるため、研修にも力を入れている。「かねてより人を大切にする風土であり、人財育成のための研修は豊富」と矢野氏は胸を張る。研修内容も、英語からロジカルシンキング、解析プログラミングなど専門性の向上まで幅広い。「キャリアは会社から与えられるものでなく、自分で歩みたいキャリアに応じて研修する」という、キャリア自律を促す同社のポリシーの表れだ。

 特にコロナ禍以降、強化されたのは、オンデマンド型のe-ラーニング・プログラムだ。これまでは座学研修が中心だったので、定員があり、希望者が参加できないこともあったが、e-ラーニング・プログラムであれば、学びたい人が学びたいときに好きなだけ、いつでも学ぶことができるようになった。

 グローバル企業と戦略提携する同社ならではの制度として、ロシュ社との人財交流がある。1、2年か長い場合は3年間、スイスのバーゼルにあるロシュ本社か、アメリカのジェネンテックに派遣されて、中外の仕事は一切せず、派遣先の仕事に従事する。多様な視点を養い、グローバルに活躍できる素地をつくり、ネットワークを構築する絶好の機会だ。博士課程進学や留学などの支援も並行して行っている。