ケース③ 相手方が住所地におらず、完全に行方不明である場合
現住所に相手方がいない場合や、海外に住んでいるため日本に住民登録がなく、完全に行方がわからない場合には、「不在者財産管理人」を選任しましょう。
不在者財産管理人とは、行方不明になっている人の代わりに財産を管理する人のことをいい、相続に利害関係がない親族や弁護士、司法書士などの専門家が選ばれます。この選任申立ての手続は、行方不明者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
不在者財産管理人は家庭裁判所の許可を得ることができれば遺産分割協議に参加することが可能です。不在者財産管理人は、基本的には行方不明者の権利を守るために、法定相続分を主張することになると思われます。
ケース④ 生存の可能性が低い場合
生死不明の状況が7年以上経過している場合や、災害に遭って生存の可能性が低い場合には、家庭裁判所に「失踪宣告」を申し立てることができます。失踪宣告が行われると、その相続人は死亡したものとして扱われるので、遺産分割協議に参加させる必要がなくなります。
ただ、その失踪者に相続人がいる場合には、代襲相続(相続する権利が、次の代の相続人に受け継がれること)により、その相続人が遺産分割協議に参加することになります。失踪には次の2種類があります。
◦普通失踪:行方不明になって7年間生死が明らかでない場合
◦危難失踪:戦争、船舶の沈没、震災などの危難に遭遇して、その危難がやんだ後1年間生死が明らかでない場合
遺言書があれば相続手続可能
連絡が取れない相続人がいたとしても、法的に有効な遺言書があれば、他の相続人の同意は必要なく、遺言書の通りに遺産分割を行い、銀行口座の解約や不動産の名義変更も可能です。連絡のつかないご家族がいる場合には、遺言書はしっかり用意しておきたいところですね。
(本原稿は、橘慶太著『ぶっちゃけ相続「手続大全」ーー相続専門YouTuber税理士が「亡くなった後の全手続」をとことん詳しく教えます!』を編集・抜粋したものです)