日本の「虐殺」は否定するのに今回は鵜呑み?

 ロシアの「戦争犯罪」を厳しく糾弾する西側諸国が、日本の「戦争犯罪」をどのように捉えているのかがよくわかるのが、イギリス国営放送BBCニュースの<南京大虐殺で、多くの中国人救ったデンマーク人 没後36年目の顕彰>(2019年9月2日)だ。EUの問題を主に取材しているジャーナリストのローレンス・ピーター氏の認識を以下に引用させいただく。

<旧日本軍はその後、6週間にわたって南京で暴挙を繰り広げた。捕虜や市民を拷問し、レイプし、殺害した。この虐殺による死者は30万人に上るとみられている。

被害者の多くは女性や子どもだった。レイプされた女性は約2万人に上るとされる。多くの中国人目撃者に加え、シンドバーグ氏のような現地にいた西洋人も、この残虐行為を記録している。>

 その「記録」の中で代表的なものが、1937年12月15日に「南京大虐殺」の見出しで「日本兵が中国人の一群を処刑する光景を目撃した」などと報道したシカゴ・デイリー・ニューズや、同年12月18日に「捕虜全員を殺害 日本軍 民間人も殺害」と報じたニューヨーク・タイムズである。

 しかし、日本の「南京事件はフィクション」派の方たちはこれらの報道はみな「フェイクニュース」であって、民間人を虐殺したのはすべて中国兵である、という主張をされている方もいらっしゃる。

 これらが事実かどうなのかということは、ここではちょっと脇に置く。

 筆者が言いたいのは、このように欧米諸国の「日本による虐殺」認定をここまで全否定して、懐疑的に見ている人たちが山ほどいるというのに、今回のウクライナ戦争に関しては、人が変わったように、欧米諸国の主張や報道を鵜呑みにしているという違和感である。

「そんなもんロシアが120%悪いからだろ」という怒声が聞こえてきそうだが、アメリカを中心とした有志連合軍がイラクに侵攻した時も、アメリカは「大量破壊兵器がある」とうそをついたことがわかっている。あの時も日本は「イラクが120%悪い」とコロッとだまされて、イラクへの侵攻を応援してしまった。

 繰り返しになるが、ウクライナがうそをついているなどと主張しているわけではない。歴史の教訓を学べば、もうちょっと多様な意見が出てきてもいいはずなのに、世の中的には「ロシアの残虐行為を許すな」の一色になっていることにモヤモヤしているだけだ。