両国が「戦争プロパガンダ」を駆使していることに気づいているか

 このいわゆる「戦争プロパガンダ」というのは、湾岸戦争以降の戦争や国際紛争でもたびたび確認されている。アメリカの「大量破壊兵器」の捏造もそのひとつだ。

 大砲から航空機、そして原爆から無人ドローンという感じで戦争のツールはどんどん進化しているが、戦争というものの悲惨さ、醜さの本質は変わらない。それと同じで、「戦争プロパガンダ」の本質は昔から何も変わっていない。

 ベルギーの歴史学者アンヌ・モレリはあらゆる戦争に共通するプロパガンダを解明するとして、「戦争プロパガンダ10の法則」(草思社)で以下のようにまとめている。

1.「われわれは戦争をしたくない」
2.「しかし敵が一方的に戦争を望んだ」
3.「敵の指導者は悪魔のような人間だ」
4.「われわれは領土や覇権のためではなく偉大な使命のために戦う」
5.「われわれも意図せざる犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」
6.「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」
7.「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」
8.「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」
9.「われわれの大義は神聖なものである」
10.「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」

 いかがだろう。プーチン大統領やゼレンスキー大統領が国際社会や自国民に対して発しているメッセージと怖いほど重なってこないか。

 近年起きた戦争や国際紛争の指導者たちの発言を見ても同じことがいえる。もっとさかのぼれば、大日本帝国のリーダーたちも同じようなことを言っていた。

 今、ウクライナやロシアがSNSを用いて互いに情報戦を仕掛けているというが、ツールが最新になっているだけで、その内容は「10の法則」に合致するものばかりだ。

 どちらが正しくて、どちらが間違っているという話ではない。ましてや、ブチャで起きた惨劇が「戦争プロパガンダ」だなどと主張したいわけでもない。

 どんな国でも戦争というものに突入して、そこで勝つためにはこのようなプロパガンダを駆使しており、そこでは時にフェイクニュースも平気で垂れ流しているという醜悪な現実がある。そういう「情報戦」に日本人があまりにも無防備ではないか、ということを指摘したいだけだ。

 「情報戦」に無防備ということは、簡単に他国のプロパガンダに踊らされてしまう「お人よし」な部分があるということでもある。

 これまで見たように、欧米では戦争中にうそをつくのが当たり前で、今はプーチンをぶっ潰すような威勢のいいことを言っているが、自分たちの国が損をしそうになれば、あっさりと前言を翻してロシアと手打ちにすることだってあり得る。

 気がついたら、「アジアのリーダー」なんておだてられて、西側諸国に忠犬のようにくっついていて日本だけがバカを見るなんてこともなくはない。

 いい加減そろそろ、「アメリカ様にくっついていれば日本は安全」みたいな「平和ボケ」から脱却すべきではないか。

(ノンフィクションライター 窪田順生)