自分にしかできないことを求めて

平尾:周りに頼られますよね? 小泉さんの周りには常に人の輪ができて、私たちの世代の起業家はみんな小泉さんに相談に行こうという空気になっていました。頼りがいのある兄貴肌のイメージ、頼られれば面倒を見る親分肌のイメージに見えていました。

小泉:たぶん、単純に小学校から大学まで、ずっとキャプテンや代表をやってきたので、それが関係しているのかなと思うね。それに、前回CxOはほとんどやったことがあるという話が出たけど、スタートアップの経験は人一倍やってきた。だから、解いたことのあるドリルが多いだけの話で、それほど特別な話じゃないと思うよ。

平尾:かっこいいですね。

小泉:単純に向き合った数が多いだけでね。

平尾:自分は20代で上場したかったので、常に時間に追われていました。周りから見ると、生き急いでいるように見えたかもしれないんですけど、小泉さんは24歳のスーパーエリートのときに、振り返ることはなかったですか。ワクワク楽しくやっていたら前に進んでいった感じですか。

小泉:生き急いでいる感じはなかったけど、ずっと仕事はしていたね。大和を辞めるときは、郵政民営化をやっていたんだよ。

平尾:大きいプロジェクトですね、よく辞めようと思いましたね。

小泉:日本証券業界過去最大のIPO、10年かけて10兆円というプロジェクトだったんだけど、そこに平社員で唯一入っていた。みんなからすると「なんでそんな出世コースに入っているのに辞めるんだ?」となる。でも僕としては、逆。ミクシィやネット系企業をやっていると「小泉さん、小泉さん」と頼られ、一緒にサービスをつくっている感覚になれる。一方で、郵政民営化はただのワンノブゼム。もちろんプロジェクトが大きいのでやりがいはあったけど、自分じゃなくても誰でもできると気づいたので、僕は辞める道を選択しようと思ったんだよね。

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