金融庁は、かなり前から一般NISAの導入を検討していたはず

 でも、私は本当のところは違うと思います。

 一般NISAは2014年1月からスタートした制度です。ということは、おそらく金融庁の職員はその大分前から、一般NISAの原型となったイギリスの非課税制度ISA(該当する金融商品をISA口座で運用した場合に、利益や利子などに税金がかからない制度)を調べるため現地視察に行っていたことでしょう。

 さらに日本国内でも識者を集めて意見交換をするなど、相応の時間を費やして、日本国内で一般NISAをスタートさせた場合の影響をしっかり調べていたと思います。

 国がひとつの制度を新設して稼働させるためには、極めて慎重なスタンスで長い時間を掛けて行うはずです。

「ようやく株価が好調になったから、これを機に軽減税率を無くして一般NISAを導入しましょう」などと、軽々に行えるようなものではないはずです。

 しかも、税制の軽減措置ですから、金融庁の独断で導入の是非を決められるものではなく、関係省庁との調整を幾度となく繰り返して、ようやく導入に至ったはずです。

 そう考えると、株価が好調になったから株式売買益の軽減税率を取りやめ、一般NISAを新設したというのは、いささか的外れです。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信代表取締役会長CEO
一般社団法人投資信託協会副会長、公益財団法人セゾン文化財団理事
1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。2020年6月より現職。
つみたてで、コツコツと資産をふやす長期投資を提言、国際分散型投資信託2本を15年以上運用し、
個人の長期資産形成を支えている。客観的な定量評価を行う複数のファンドアワードで連続受賞。
口座開設数16万人、預かり資産4700億円を突破。
主な著書に『最新版 投資信託はこの9本から選びなさい』『投資信託はこうして買いなさい』他多数。