人類に1割だけいるという左利き。自身も左利きで、『1万人の脳を見た名医が教えるすごい左利き』著者の加藤俊徳医師によると、左利きには「ひらめき」や「独創性」など、右利きにない様々な才能があるそうです。
そこで、加藤先生が各界で活躍する「すごい左利き」の才能を深掘りする新企画【すごい左利きファイル】をスタート。初回に登場するのは、子役として活動し、現在もマルチな活躍で人気の鈴木福さんと、同じく左利きである福さんの弟・楽(たの)さんです。
本記事では、左利きの子どもを持つ親にオススメの子育て法に迫ります。(構成:山本奈緒子)
「愛菜ちゃんはスラスラ喋ってたけど……」
福:僕、小さいときは言葉に詰まることが多かったんですよ。最近は少なくなったんですけど、昔出演していたバラエティ番組を見ると、「あのぉ……、〇〇でぇ……」という喋り方をしていました。その横で、(芦田)愛菜ちゃんはスラスラ喋ってるんですけど(笑)。
加藤:あの話し方が可愛いと人気だったけど、本当はスラスラ喋りたいのにああなっていたということ?
福:そうです。でも楽も同じことはすごくあるって言っています。自分が言いたいことがすんなり出てこないって。で、先生の本を読んだらそれは左利きに多い特徴だって書かれていて、そうなのかー!って思いました。
加藤:そうだね、左利き右利きにかかわらず、言語処理というのは左脳でおこなっている人がほとんどなんです。で、先ほど右手で字を書くときは左脳が使われ、左手で書くときは右脳が使われると話しましたけど、それはつまり、右利きの人は言語処理する脳と、字を書く脳が一緒ということ。
でも左利きの人はいったん左脳で言語を処理し、それを右脳に移してから書いている。つまり右利きの人より、言葉を外に出すのに時間がかかるんです。
福:だからスラスラ喋れなかったんですね。
加藤:でも大丈夫。人間の脳の発達には、年齢による「旬」があるから。左脳をあまり使わない左利きは、どうしても小さいときは左脳の発達が遅いんだけど、6歳過ぎぐらいからだんだんと発達していきます。
楽くんはいままだ、お兄ちゃんとかまわりの大人を観察して、頭の中に視覚映像をいっぱい貯めている時期なんですね。でもこれから言語脳を鍛えていくと、どんどん見たものを言葉にすんなり変換できるようになります。決して話すのが苦手なんじゃなくて、他の子供と進歩の時期が少しズレている、というだけなんです。
左利きの子どもは「覚醒のとき」がくる
福:楽は覚えたセリフを発するのがすごく苦手らしいんです。僕はわりと早い段階から、セリフを言うのは得意だったんですけど、それは楽が左利き濃度が高いからなんですかね? だから楽はいつも、「間違いじゃないかな?」「これで合ってるかな?」って言いながらセリフを言っています。
加藤:そうだね、福くんより右手を使ってきていないぶん、言語処理をおこなう左脳の発達がゆっくりなのかもしれません。
8歳というと、まだ左右の脳の落差が大きい状態だと思います。ただ左利きの人はさっきも言ったように、言語を扱うとき左脳で処理して右脳でアウトプットしているので、左右両方の脳を使うことを常におこなっています。
右利きの人より使える脳の範囲が広いので、10歳ぐらいになって左脳の発達が追い付いてきたら、全く違うキャラクターになると思いますよ。
福:覚醒のときが来るんですね(笑)。
加藤:そのためにも楽くんはいま、自分が見たことを言葉にする脳番地トレーニングをするのがオススメ。どんどん話したり書いたり。本をたくさん読んで、その書ける数を増やしていくとバッチリです。
福:じゃあ、日記とか書いたらいいんですか?
加藤:「今日、こういうことがあってこうだった」とか、「お兄ちゃんがこう言った」とか、出来事だけ書いていったのでいい。自分がどう思うか、とかはもうちょっと大きくなってから書き始めて大丈夫です。そういうことを続けていたら、まさにいつか覚醒のときがきます。