左利きの脳はアイディアの宝庫

福:最近、本をたくさん読むようになって。そうしたら「これをこうしたらいいんじゃないか?」とか「こんなものがあったら便利なのに」とか、そういったことを考えるのがすごく楽しくなってきたんです。

加藤:左利きの脳はアイディアの宝庫なので。いろんなところに取材に行ったり、いろんな人に会ったりして経験が蓄積してくると、もっともっとひらめきが生まれるようになると思います。そういう意味では、僕みたいなけったいなおじさんに会うのも経験の一つかもしれないですね(笑)。

「ミラードローイング」が左利きの力を開花させる

福:もう一つ「へえ~」と思ったのが、ミラードローイングの話です。左利きは右利きの行動を見ながら毎日のようにミラードローイングをしている、というのは「たしかに!」と思いました。

加藤:ミラードローイングとは、鏡に映った反転映像を、鏡を見ながら描くこと。これをおこなうと、視覚系脳番地の他に、運動系、思考系、伝達系の脳番地も刺激されることが分かっているんですよ。

福:スポーツでも教える先生は右利きだから、全部右でのお手本を見て、それを左に反転させてやっているんですよね。

加藤:とくに福くんは親が右利きだったから、左利きのロールモデルがいなかったですもんね。でもミラードローイングをおこなうには、指先の角度や動きなど細かいところまで観察しないと無理。必然的に、何でも注意深く見る力がついていくんです。

福:子役としては、それがすごい役に立ったと思います。子役って、演技で自分の感情を表現するというのは、まだ大人のようにはできない。だからいかにまわりの俳優さんたちがやっているように真似られるか、が大事になってくるんですけど、僕はいつも他の人の動きを反転させて真似ていたので、演技も真似るのが苦痛じゃなかったです。むしろ同じ左利きの人を真似るほうが、慣れていないので難しいぐらいでしたね。

加藤:分かる分かる。こんなに年代が違うのに同じ感覚に結びつくって、これは左利き同士ならではですね。