人類に1割だけいるという左利き。自身も左利きで、『1万人の脳を見た名医が教えるすごい左利き』著者の加藤俊徳医師によると、左利きには「ひらめき」や「独創性」など、右利きにない様々な才能があるそうです。実際、左利きとして知られる有名人の中には、他にはない天才性を見せている人も多くいます。
そこで、加藤先生が各界で活躍する「すごい左利き」の才能を深掘りする新企画【すごい左利きファイル】をスタート。初回に登場するのは、子役として活動し、現在もマルチな活躍で人気の鈴木福さんと、同じく左利きである福さんの弟・楽(たの)さんです。
全4回でお届けする鈴木兄弟へのインタビュー。本記事では福さんに向いている意外な天職が明らかになってきました。(構成:山本奈緒子)

鈴木福の天職は「MCと政治家」!?脳の専門家が断言!鈴木 福(すずき・ふく)
2004年6月17日生まれ。東京都出身。特技は箏・けん玉。趣味は野球。2011年にTVドラマ「マルモのおきて」に出演し、人気を博し以降、映画、TV、舞台、CMなど多岐にわたり活動を通づけている。最近はニュースなどの情報番組やラジオ・ナレーションなど仕事の幅を広げ自身のInstagramYouTubeなどSNSも活用し情報を配信している。

「視野の広さ」は左利きのメリット!

加藤俊徳医師(以下、加藤):ひとくちに左利きといっても、両利きのような人もいれば完全左利きの人もいます。福くんはどっち? 右手も少しは使ったりします?

鈴木福(以下、福):右手を使ったほうが効率的なときは使いますけど、基本は左です。たとえば今、僕の右前にお菓子の入ったお皿が置かれていますけど、こういうときは右手でお菓子を取ります。でもあとは全部左です。ボールを投げるのも、ハサミを使うのも……。

加藤:効率的なほうの手で取るってことは視野が両サイドにあるということですね。

福:そうなんですか? 右手側にあるものをわざわざ左手で取ることは、普段からやらないです。

加藤:脳には右脳と左脳があって。左右ともに手を動かす「脳番地」、つまり手の運動を司るエリアというのは、頭のてっぺんから3センチ外側の場所にあるんですね。で、右手を使うときは左脳の手の脳番地を使う。左手を動かすときは右脳の手の脳番地を使う。手と脳番地をつなぐ脳の導線はクロスして伸びているんですよ。

福:両方の手を使っていると、両方の脳が発達して良いってことですか?

加藤:うん、それもあるんだけど、それだけじゃなくて。右脳の手の脳番地のすぐ後ろには、左右両サイドの視野に注意を向ける脳番地があると考えられていて。

 だから左手をよく使う人は、その脳番地も一緒に刺激されて、両サイドを見る力が高まるんですよ。

 目は一応180度くらいの視野範囲があるんですけど、よほど左右両サイドを含めた全体の視野を意識していないと、視野内にある一部の物だけに目が奪われてしまう。

 たとえば今、目の前に、僕たちの声を録音するICレコーダーが置かれているけど、意識していないとレコーダーがここにあると忘れるじゃないですか。

 だけど左利きの人は両サイドを見る力が高いから、右利きの人より比較的、まわりにある物を意識する力も高い。話をしながらも、話と関係ないところまで目で意識がいっていることが多いんですよ。

 率直に言うと、無意識でも目で捉えている範囲が広いということです。

左脳が機能しなくても、
右脳が無事なら視野のダメージは少ない

福:へ~、右脳にしか、その両サイドを視る脳番地はないんですね。

加藤:そうそう、だから脳卒中を起こして左脳が機能しなくなっても、右脳が無事に残っていれば、直接脳の視覚系脳番地を損傷しない限りは、視野にはあまりダメージがないんですよ。

 有名な実験があってね。脳卒中を起こした人の前に、左右両サイドに分けてご飯を出すんです。そうすると右脳が壊れてしまった人は、片側のご飯しか食べないんですよ。でも左脳だけが壊れてしまった人にはその症状が出ない。それくらい右脳は視野の広さを司っているんですよ。

 だから左利きの人は、いろんなものに興味がいきやすい。買い物に行くと、あれも欲しいこれも欲しいってなったりします(笑)。

福:たしかにそれはあるかも(笑)。

加藤:だから舞台で立ち回りをするときなどは、右利きの人と左利きの人で見えている範囲が全然違う、と思っておいたほうがいいかもしれない。

 福くんは「みんな、自分と同じように広く見えているだろう」と思っているかもしれないけど、実は右利きの人はそこまで見えてないことがほとんどですから。

福:そうなんですね。でも親には「アンタは目の前のものが見えていない」とよく言われますけど。

加藤:それは、左利きゆえに視野が広くて、注意があちこちに動くからかもしれませんね。今だって意識しないところで、「右側にお菓子があるな」などと注意を動かしている。決して、そそっかしいというわけではないので安心してください。