抜てきされる人間力
「ギャップ力」どう磨く?

 まず、「ギャップ力」とは何か。それは、一人の人格の中に、プラスの要素として意外な一面を持っていることです。もちろん2つといわず、3つ4つあるに越したことはありません。ギャップ力のある人は、共通の趣味や、興味深いテーマに精通しているので人の懐に飛び込みやすくなります。

 また、人としての器を大きく見せる効果があります。そういう意外なキャラクターは人から嫌われないものです。そうしたギャップこそが、この人を抜擢したいという「すき間」を生むのです。

 ギャップ力を磨くには、以下の3つのステップを意識するようにしましょう。

 ステップ1 自分の得意分野を見つける

 いくつもあるなら、その中でも一番得意なジャンルを、洗い直しましょう。「なにもない」人は、自分が好きなジャンル、飽きないジャンルを見つけましょう。

 ステップ2 得意ジャンルを「誰にも負けない」と言えるまで磨く

 もし得意分野があっても「得意とまで言えない」ならば、「誰にも負けない」と、言い切れるだけの努力を重ねて、深い穴を掘りましょう。

 ステップ3 得意ジャンルからできるだけ離れた場所に、新しい穴を掘る

 営業やマーケティングの専門家であると自負している人ならば、アートやデザイン、あるいは芸事などに精通するのも良いでしょう。

 プロのビジネスパーソンとしてひとつでも深い穴があれば、それはその人の武器です。ただ、「ギャップ力」を高めるためには、自分のキャラクターからできるだけ遠いところに意外なものを用意しましょう。

「ええっ?あなたにはそんな趣味があるんですか」と言わせられれば最高です。そこにあなたの新しい可能性を感じてくれるはずです。その積み重ねが、次の仕事を頼みたくなる先輩、同僚を生むのです。

 また、自分の得意な一本道だけなら、もしその道が行き止まりになってしまったとき、途方に暮れてしまいます。令和の世になり、コロナ禍に加えて、ウクライナで戦争が起こり、世界はますます混迷し、予測不能の時代になっています。当たり前にあった仕事を失った、社業のメインストリームが危機を迎えているという方も多いのではないでしょうか。「ギャップ力」は、リスク低減という意味においても必要なのです。

振り向かせる力
「すき間力」の磨き方

 今やメジャーリーグでも、最も注目される存在になった大谷翔平選手も、投手と打者の「二刀流」というギャップに挑んで成功を収めました。彼は日本ハム時代に「常に160キロのストレートを投げなくてもいい」旨の発言をしています。いざとなると160キロの球がくると相手に思わせることが大事なわけです。

「すき間力」とは、そうした相手との駆け引きの中に生まれる「こちらに振り向かせる力」だと思ってもらえれば良いでしょう。

 似たような言葉で「肩の力を抜け」を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、ちょっと別のものです。「肩の力を抜く」のは自身の緊張感を和らげることと、その緊張が人に伝わらないようにするためのものです。

「すき間力」とは、その人自身から自然と出ているように見せて、相手を誘い込むための力というイメージです。「懐深く感じさせ」たり、「何かをしてあげたくなる感情を生む力」と言い換えても良いかもしれません。

 それは、あなたが相手に何かしてあげたいと作用することもあれば、仲間があなたを助けてあげたくなるベクトルに向かうこともあります。

 完璧な人よりも、すき間がある人のほうがより魅力的に見られます。そんな「すき間力」を意識して発揮すると、上司からも可愛がってもらえますし、同僚や部下からも慕われるようになるのです。

 では、「すき間力」を磨くにはどうすれば良いでしょうか?

 ステップ1  初対面の人と3時間話す

 初対面の人とも楽しく会話ができる。「すき間力」の高い人に共通する力です。「オープンな心」があれば、話す相手は関係ありません。つまり、何を言われても、たとえ話がつまらなくても受け止めることが大切なのです。

 ステップ2  20歳離れている人と同じ目線で話す

 上下に20歳の差がある人ともオープンに話せますか? 親子ほど開いた世代の人と、共通の話題をいかに見つけるか。経験値の違いをどういう言葉で埋めていけるかが試されます。「すき間力」がある人は、老若男女を問わず、同じ目線でものごとを捉えることができるのです。

 ステップ3 新しく買った服を壁にたたきつける

 ファッションにおける「着崩す」文化を意識しましょう。おろしたての服はパリッとしすぎて体には完全になじんでおらず、「着せられている感」が強いです。新品の服をあえて壁にたたきつけて、「こなれた感」を出すことで、他人が付け入る「隙」を醸し出すことができるのです。

「ギャップ力」と「すき間力」について、駆け足でお伝えしましたが、テコの原理と同じで、ギャップがあるほど力を込めたら距離が稼げるものです。つまり、自分自身を飛躍させることができ、結果として大きな仕事ができるようになっていくのです。

 ビジネスパーソンは、知識の振れ幅はあればあるほど良いと思います。例えば、自分のいる業界の話題だけでなく、畑違いな業界の話題に精通できれば、それは「ギャップ力」を持った武器になるでしょう。

 コロナ禍で、人と人が対面で会うのが難しい時代です。だからこそ、他業種の友人や知人と積極的に会って、知識や状況をアップデートしましょう。さまざまなジャンルに精通しているという余裕が、「すき間力」につながるのです。