自己肯定感の源泉は「努力」と「他己評価」
――第2回の対談で「失敗したことがない」というお話もありましたが、黄さんのあふれる自信、ポジティブオーラの源泉はどこから来ているのですか。
黄:いちばんの源泉は、自分の努力です。でも、自分の努力だけで自己肯定感は上がりません。絶対に必要なのは、他己評価です。
自分が努力をして「あれ? 変わってきたかもしれない」という小さな自信のきっかけを持つことが大事なんです。でも、小さいきっかけは、まだきっかけでしかないので、何も起こせません。そこに、誰かが「最近すごくない? 頑張っているね」という他己評価が乗ってくると、自分は頑張れているという自信になるんですね。これを積み重ねていくと、自分の努力は間違っていなかったと自分でも思える。第三者からの評価が積み重なると、自己肯定感が少しずつ上がるんです。
これを説明するときに、自転車に乗れる状態を想像してほしいと言います。自転車に乗るのは自分なので、自分が努力を始めなければならない。でもそれだけでは、いきなり自転車に乗れるようにはなりません。自走できるようになるまでに必要なのは、補助輪です。この補助輪こそが、他己評価だと思うんです。他人からの評価を補助輪にしながら、ゆらゆらと走っていくうちに、補助輪を外しても自走できるようなる。これが、自己肯定の高い状態です。
――そういう発想に至った出来事やエピソードはありますか。
黄:日本に来たとき、私はいじめられていました。名前もヘン、見た目もヘンだったからです。ワイシャツをズボンの中に入れ、長いソックスを履き、おかっぱの髪型。日本の流行も知らない、ただの中国人でした。それに対してビクビクしてもいました。あるとき、床屋に行ったんです。私が「イケてない」のは、髪型だと思ったからです。だから床屋のおじさんに「ツンツンさせてください」と言ったんです。そうしたら、床屋のおじさんは「ツンツン」をはき違えたんでしょうね。仕上がりは角刈りでした。私としては、短髪にしてジェルで立たせようと思っていたのに、違うツンツンにされてしまった。へこみましたね。ところが、学校に行ったらこう言われたんです。
「なんか雰囲気が変わったね、ちょっとかっこいいじゃん」
見た目が変わっただけで、人に褒められたんです。するとこんどは、ファッションも気になってくる。服を少し変えるだけで周りは「似合うじゃん、かっこいいよ」と言ってくれる。気づいたときには「イケメンキャラ」になっていました。
平尾:イケメンですよ。
黄:いやいや、そんなことなかったんです。でもイケメンキャラになったことで、自分のことを自分でケアすれば、人から評価されてこんなにも自信がつくんだという経験をしました。まさに、自己肯定感の源泉を体感する経験をしてきているんです。
平尾:いい話ですね。
――それを今まで継続されているということですね。
黄:そうですね。実はサラリーマンになって太ってしまったこともありました。その状態から、パーソナルフィットネスを受けて引き締まった身体になることで少し自信が戻ります。その後、バチェロレッテというメディアに出たときに他己評価が突然ドカーンと入ってきたんです。周りの人の評価だけでも自信を持つことができたのに、何十万人から突然「イケてる」という評価が入ったので「俺って本当にかっこいいんだ」と思いました(笑)。自信を積み重ねてきたわけです。
SNSが大事なのは、他己評価を拾いやすくなるからです。そうすると、人の評価を通じて自分がよく見えるようになる。良くも悪くも、自分がわかるようになるのです。
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