日銀の物価目標である消費者物価上昇率2%は、東京都区部でも全国でも5月には到達する見込みだが、「達成」とはいえないのではないだろうか。詳しく解説しよう。(経済評論家 塚崎公義)
3月の消費者物価指数は
前年同月比プラス1.2%
3月の消費者物価指数は、前年同月比1.2%であった。世界的にインフレが懸念され、米国が利上げを始めているのに、日本だけ物価が安定していて、日銀がインフレ目標としている2%に及んでいないことになる。
しかし、発表された3月の全国の消費者物価指数を見ると、通信料(携帯電話料金)の寄与度がマイナス1.4%となっている。しかも、この寄与度は昨年4月とおおむね同水準だ。これは、携帯電話料金が昨年4月に大幅に引き下げられたことによるものである。
つまり、携帯電話料金以外の消費者物価は、そこそこ上昇しているのである。生活実感からしても、最近さまざまな物が値上がりしており、インフレ率はもっと高いはずだと感じている読者も多いことだろう。
4月分の消費者物価は
高い上昇率に
4月になると、前年同月も携帯電話は安かったので、携帯電話の値下がりによる消費者物価前年比の押し下げ効果が消えてなくなる(「剥落する」ともいう)。そうなると、携帯電話以外の諸物価が昨年4月以降に少しずつ上昇していた分だけが消費者物価前年比に反映されるので、かなり高い上昇率となるはずだ。
加えて、ロシアのウクライナ侵攻により原油などの価格が値上がりしたが、その分が徐々に最終製品の価格に転嫁されて、消費者物価をさらに押し上げることも予想される。