今、世界中からウクライナのゼレンスキー大統領の演説力が注目されている。彼はウクライナ侵攻がはじまった当初から演説動画を頻繁にSNS上にアップし、国民や全世界に自分の言葉で語りかけてきた。また、各国の議会では国ごとに異なるメッセージを演説し、大きな注目を集めてきた。彼がコメディアンであり、スピーチライターとして元ニュース週刊誌のジャーナリストがついているともうわさされ、まさに言葉の力を集結させている。今回は3月23日、日本で行われた演説をひもとく。(株式会社カエカ代表 兼 スピーチライター 千葉佳織)
ゼレンスキー大統領から日本が学ぶべき「リーダーたる語り」
ゼレンスキー大統領の演説に関して、修辞学的な賛美をすると「戦争中なのに『言葉が良い』なんてお花畑だ」「表層的なところに注目をして何も意味がない」といった意見をぶつけてくる人もいる。
しかし、私は違う考え方だ。彼の言葉の力によって、世界的に支援者を募ることができ、国際社会への影響力を高めていることは事実であろう。仮に日本がウクライナの立場だったとして、彼のように「リーダーたる語り」ができていたかと思うと懐疑的である。私たちは今、ゼレンスキー大統領から、語ることの大切さを学ぶべきだ。
彼の演説には日本人に「聞く耳を持たせる」ためのいくつかのポイントがある。単なる遠い国の話で終わらせないために、研究しつくされていたレトリックを一つずつ解説する。注目すべき言葉は太字にしているので、そこに注目しながらポイントを押さえていこう。
まず、最初から洒落た表現が登場する。しかも、そのフレーズは演説の最後でも使われている。