日立が「デジタル人材10万人獲得」の大風呂敷計画、その実現性と秘策は?日立製作所は2022年3月期、過去最高の当期利益をたたき出した。ただし、前中期経営計画で目指した調整後営業利益率10%の目標は未達に終わった Photo:AFP=時事AFP=時事

製造業から脱却し、デジタル化にシフトしてきた日立製作所がさらなる変革に向けてアクセルを踏んだ。顧客の困りごとをITで解決するデジタル人材を9万8000人に拡充するのだ。従来の目標の3倍となる大幅増員によってデジタル化のソリューション事業の売上高を2.7兆円に拡大する。世界的な人材争奪戦に日立は勝てるのか。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

デジタル人材の獲得に
推計4500億円投入の本気度

 日立製作所の小島啓二社長兼CEO(最高経営責任者)が4月28日に発表した新たな中期経営計画の中で、最も力を込めてプレゼンしたのが、デジタル人材の大幅増員についてだった。

 日立はデジタル化のソリューション事業「ルマーダ」の売上高を新中計の最終年度である2025年3月期に現状からほぼ倍増して2兆7000億円に拡大する。

 小島社長は「(日立にとってだけではなく、社会的にも)DX(デジタルトランスフォーメーション)が完全なる流れになった。アクセルを踏むべき時だ」と述べ、ルマーダ事業の売り上げ倍増に自信を見せた。それと同時に、同事業は「人の数イコール売上高だ」として、成長には人材の獲得が不可欠であることを強調した。

 果たして日立は世界的に激化している人材の争奪戦に勝てるのか。次ページでは、人材獲得で日立が広げた「大風呂敷」計画の実現可能性と、日立の秘策に迫る。