日立 最強グループの真贋#2Photo:Yuichiro Chino/gettyimages

日立製作所は、完全子会社化したばかりの日立ハイテクの主要部門を大幅に縮小する方針を固めた。当該部門の社員は日立本体のDX(デジタルトランスフォーメーション)事業要員として移管される見通しだが、大幅な職務変更を迫られる。日立ハイテクは一時、事業の切り売りも検討された因縁の元・上場子会社だ。最終的には、日立のDX事業とシナジーがあるとの経営判断から、売却方針は見送られて本体へ吸収された経緯がある。日立グループに残れた子会社であっても、弛みない構造改革が待っている――。そして、その構造改革の手綱を握っているのが、小島啓二「新社長」である。特集『日立 最強グループの真贋』の#2では、日立のグループ統治術の真相に迫った。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

完全子会社化された日立ハイテクは
抵抗勢力の急先鋒だった

 日立製作所の上場子会社として、医療機器や半導体装置を製造してきた日立ハイテクは、日立が半導体装置事業を売却させようとしても、それを拒否するなど、「聞き分けの悪い子会社」だった(詳細は本特集#1『日立新社長が目論む「グループ再編」最終形、事業構造改革の次なる一手は?』参照)。

 日立ハイテクが親会社の意向を無視できたのは「(主要3部門の一つで)事業ボリュームが大きい商社部門が、半導体装置というメイン商材を手放したくないという思いが強かった上、会社全体として稼げていたので資金的な余裕があった」(日立元幹部)からだ。

 また、過去にも日立が日立ハイテクを完全子会社化しようと画策したことがあったが、実現しなかったという。それは日立ハイテク側に、「経営の独立性を失えば組織再編を迫られる」という警戒感があったからだ。

 こうしたハードルを越えて、完全子会社化を主導したのが、6月に就任した小島啓二・日立社長である。

 それを発表した2020年1月の会見時点では、日立ハイテク(当時は日立ハイテクノロジーズ)の構造改革について「すぐに何かするつもりはない。だが、日立の事業全てにおいてポートフォリオは常に最適化していく」と語るにとどめ、具体的には言及しなかった。

 ところが水面下では、日立ハイテクの大掛かりなリストラが検討されていることが分かった。“虎の子”として本体に吸収された事業・子会社であっても、安穏とはしていられない実態が明らかになったのだ。

 では、その構造改革の中身とはどんなものなのか。