協和キリン,中外製薬,協和キリンVS中外製薬、抗体医薬開発の双璧だった2社の悲しき成長格差

 命終から16年余りが経過してもなお、注目され続けるピーター・ドラッカーの名言に、「Culture e-ats strategy for breakfast.」というものがある。英単語の字面だけを追うとピンと来ないが、本邦では「企業文化は戦略に勝る」と意訳されている。優れた社風は、他社が簡単に真似できない無形の経営資源として、コンサルタントなどがお仕着せする経営戦略よりも力があるといったところだろうか。

 一方で、意地悪な見方をすれば、どんなに優れた経営戦略も、その会社に深く根付いてしまった悪しき企業文化は打ち負かすことはできない、という風にもこの格言を捉えることができる。ニッポンの昭和の殻を残す会社は寧ろ、こちらのほうが多いのではなかろうか。立派な中期経営計画を繰り返し打ち出しても、腐海のような社風が根元から崩していく構図が繰り返されている。昨今、ネガティブニュースを連発して経済メディアを賑わしているキリンホールディングスが、まさにこれに当てはまる。

 同社は2000年代初頭以降、国内のビール・飲料市場が本格的に縮小し出す前に「アジア・オセアニア地域のリーディングカンパニーになる」と当時の社長がぶち上げ、海外の同業他社を買い漁った。さらに15年までに連結売上高で3兆円をめざすとした長期経営構想に向け、収益構造の足固めの狙いも込めて、08年に協和発酵を買収し、傘下のキリンファーマと合流させた。大手経済誌が「M&Aの巧者」と持ち上げたのもこの頃だった。