中国では物言う消費者が強い

 中国では消費者、特に消費の主役になっている若い世代の影響力が強い。これら新世代の消費者は品質についての要求が高く、粗悪品には強く異を唱えるのが特徴だ。中国の日系シンクタンク幹部は「ネット通販で購入した商品に不都合がある場合は、消費者はすぐに返金してもらえる。中国でいい加減な商品を売ればすぐにしっぺ返しを食らいます」と話す。

 ロックダウン下の上海で、市政府からの配給品に紛れ込んだ数々の“問題食品”に、市民が大騒ぎした。上海市紀律検査委員会が調査に力を入れるようになったのは、黙ってはいない市民による“下からの突き上げ”があったからだといえよう。実際、上海市政府が開設するホットラインには、配給品の“問題食品”について市民の苦情やクレームが殺到した。

 一方、上海では、消費者がSNSのウィーチャットの公式アカウントを使い、食品の2次元コードをスキャンしたり、番号を打ち込んだりすることで簡単に食品の履歴や企業の状況を追跡することができるようになった。トレースはすでに日常的に習慣化しているようだ。ちなみに上海では4年前の2018年から、当局の指導で食品のトレーサビリティの徹底が図られた。

“問題食品”の数々は、上海市政府の権威を失墜させた。同時に市民は防衛本能を高めた。恐らくこれが契機となり、トレーサビリティによる“見える化”はさらに進むだろう。皮肉にも、進歩は危機と抱き合わせだということだ。