選別される生保・損保・代理店#3Photo by Yasuo Katatae

日本生命保険は子会社の大樹生命保険に対して、自主独立を基本とし、一定の距離を保ってきた。しかし日本生命の清水博社長は突如方針転換を表明。2022年から営業施策やコンプライアンス体制など、あらゆる面で“日本生命流”を注入するに至った。特集『選別される 生保・損保・代理店』(全28回)の#3では、日本生命の“変容”の背景には何があるのか、また大樹生命社内ではどう捉えられているのかについて探った。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

「大樹は低位な発展にとどまっている」
日本生命清水社長が断じた理由とは

 2022年3月17日に行われた日本生命保険の経営戦略説明会。清水博社長が言い放った大樹生命保険への評価は、日本生命グループ各社だけではなく、業界内にも大きな波紋を広げた。

「独自の顧客基盤を十分に生かした営業職員活動ができていないことが、大樹生命が低位な発展にとどまっている原因の一つであると考えています」

 完全な“ダメ出し”だった。

 大樹に対してだけではなく、他のグループ会社も含めて、清水社長が公の場でこれほどはっきりとした評価を述べたことはなかった。

 大樹は旧三井生命保険で、日本生命と15年9月に経営統合を発表。16年度から日本生命グループの一社に加わっている。三井グループを離れたことから、19年4月に今の大樹生命保険に社名変更した。

 経営統合といっても、実際は一子会社として、自主独立の経営を求められてきた。日本生命は一定の距離を保ち、各社が自主的に成長戦略を立て、実行する――。それが日本生命のグループ経営の基本方針だったからだ。

 そんな方針がある中での、“低位な発展”発言である。大樹社内に衝撃が走ったのは言うまでもない。

 大樹社内では、そもそも日本生命が自社に対して、そのような評価をしていることすら、認識されていなかったようだ。“低位な発展”という言葉も、社内では聞いたことがないワードだったという。

 実は21年3月に行われた日本生命の経営戦略説明会では、大樹について清水社長は、「販売現場のシナジー創出のために何ができるか考えていきたい」と述べるにとどめ、現状の評価についてはコメントしなかった。

 一体、この1年間で日本生命と大樹の間で、何があったのだろうか。

 次ページでは、清水社長が“低位な発展”と発言した背景や、そう断じるきっかけ、22年度から大樹の随所に見られる“日本生命流”を注入した痕跡について、レポートしていく。