起業する人と、しない人を分けるもの

平尾:福島さんは学生ベンチャーをやって、TNK(東京大学の起業サークル)にも入られていたので、すごく起業に興味があったと思うんですよね。でも理系の方々って、すごく頭がいいし優秀なのに、当時は起業をする方が少なかった印象です。これって、今もそうなんですか。

福島:今はめっちゃ変わってます、多分。

平尾:変わっていますか。

福島:はい。僕、東大の松尾豊先生の講義で年1回講演をしているんです。大学生のエンジニアで「起業したいです」みたいな人が集まっている講義なんですけど。昔って、理系の学生で一番優秀な人って、外資系コンサルや投資銀行にいったじゃないですか。それが今、スタートアップになっているんですよ。一番できるやつは起業するっていうふうに、変わってきてるんです。

平尾:まだマイノリティなのかな、と思っていたんですよね。一番の人はそうかもしれないけれど、マジョリティではないのかなと思っていて。

福島:まあ、それはそうかもしれないですね。

平尾:それって何が理由だと思いますか。何かそういう構造がありますよね。受託で働ける時代から、プロダクトを立ち上げる時代に変わってきたと思っていて。でも、起業する方とそうじゃない方は何が違うのか。ロールの違いなのか、世の中の構造なのか。何なんですかね。

福島:触れる情報の変化が大きいと思います。僕も、それこそ高校生の頃、ちょうどライブドア事件があったんですよ。サイバーエージェントも、今とは違う意味で目立っていた時代。やはりそういうのは、めちゃくちゃ覚えていて。「こういう世界ってあるんだ」みたいな。今はその比較にならないくらい、「起業してこうなった」「学生が始めたスタートアップが大成功した」みたいな情報が増えています。それに触れることはすごく大切だなと感じます。

自分自身もTNKに、単純にミーハー心というか、「どんな世界なんだろう」という好奇心から入ってみました。すると、自分とそんなに変わらないと言っちゃ失礼なんですけど、先輩たちが普通に、ある意味、結構適当に起業してるのを見て。

平尾:(笑)

福島:経営者って「完璧じゃないとだめ」みたいな先入観はなくなりました。要は24歳の大学院生とかがいきなり起業しても、別にファイナンスわかんないし、営業の仕方もわかんない。わかんないことだらけじゃないですか。「そんな状態でも起業していいんだ」っていうのを肌感として知ったのが、起業できた理由ですかね。

学校の授業とかで、そういうことは教えてくれないじゃないですか。むしろ学校って「いっぱい知識をつけて点数を高く取ったら、いい大学入れますよ」みたいな、そういう教育をされるので、リスクを取って自分で情報を取りにいくとか、見切り発車で始めて、その中でチームを作って成果を出すみたいなことって、あんまり評価されないと思うんですよね。起業できるかできないかは、触れている情報の問題という気がします。

〈第2回へ続く〉