過去の成功例が通用せず、優れた手法はすぐに真似される「正解がない時代」。真面目で優秀な人ほど正攻法から抜け出せず、悩みを抱えてしまいます。リクルートに入社し、25歳で社長、30歳で東証マザーズ上場、35歳で東証一部へ。創業以来12期連続で増収増益を達成した気鋭の起業家、株式会社じげん代表取締役社長執行役員CEO・平尾丈氏は、「起業家の思考法を身につけることで、正解がない時代に誰もが圧倒的成果を出すことができる」と語ります。「自分らしく」「優秀で」「別の」やり方を組み合わせた「別解」を生み出すことで、他人の「優等生案」を抜き去り、突き抜けた結果を実現することができるのです。本連載では、平尾氏の初の著書となる『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』に掲載されている「現代のビジネスパーソンが身につけるべき、起業家の5つの力」から抜粋。「不確実性が高く、前例や正攻法に頼れない時代」に自分の頭で考えて成果を生む方法を紹介します。

「とりあえず手を動かす人」と「過去問を調べてから課題を解決する人」の決定的な違いPhoto: Adobe Stock

過去の成功者に学びつつ、真似はしない

問題解決のプロといえば、コンサルタントが思い浮かびます。彼らは新しい問題に取り組むとき、一定の時間をかけてあらゆる情報をインプットします。この準備は早ければ早いほどいいと思います。

私も未経験の業界については、短期間でおおよその流れをつかみます。1週間もあれば、どのような問題でもスタートラインには立てると思います。完璧は求めず、だらだらとやっても意味はありません。

そのうえで、周辺の情報にも目を配ります。多くの人が自分と問題しか見ていませんが、周りに何人いて、誰が同じことをやっていて、過去には何人やっていて、誰が優れた成果を上げていて、その理由は何かを考えます。そうすることで視野が広がり、問題の本質に迫ることができるのです。

世の中に存在する問題は、99%過去問、あるいは過去問の相似形でしかありません。だとしたら、事前に過去問に当たる作業は絶対にやるべきです。過去問に当たったうえで、その先の1%の問題の本質に対する準備に集中する。そうすれば、問題を解決し、高い成果を上げられるようになると思います。

可能であれば、過去に問題を解いた人に会いにいくべきです。

そういう人に会うと、その人と自分との差分が浮き彫りになります。結果だけ見て判断するのではなく、その人の強み、特徴や圧倒的な成果をすべて言語化できるように意識すると、差分を把握することができます。

一次データは情報の宝庫です。二次データでは本当の情報も差分もわかりません。情報量を多くするため、キーマンや当事者本人には直接会ったほうがいい。ただ、地方に住んでいるなど、直接会うのが難しい人は、二次データでも構わないので多面的に探っていかなければなりません。

ここで重要なのは、過去の強い人に会っていろいろ教えてもらったからといって、その人と同じようにやろうと考えないことです。真似をすることに、競争優位性はありません。

むしろ、過去の問題を解き方を含めて把握したうえで、それとは別の自分独自のやり方を考えることに意味があります。

過去問を聞いた時点で、その情報は陳腐化してしまいます。誰かがアクセスできる情報は、他の誰かも聞いているはずです。その時点でコモディティ化し競争優位性はないので、それを超えるやり方を考えていきます。

その際、収集した過去の強い人のデータが役に立ちます。

・売上がどのくらい上がったかなどの「規模」
・何人の顧客にリーチしていたかなどの「範囲」
・過去の強い人が持っていた武器の「強さ」
・何人が幸せになったか、何人が感銘を受けたかなどの「深さ」

そうしたポイントを見ます。ほかに効率性や拡張性をチェックし、過去に強かった人のデータをさらに強化したうえで、そのアウトプットがいまの時代にどこまで通用するかを考えていきます。

(本原稿は、平尾丈著『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』から一部抜粋・改変したものです)