営業の本質は、やり方よりも「あり方」

星:この5段階について、「最初は対峙していたものが、だんだん同じ方向を向いていき、最後には一緒にゴールをする」というイメージが思い浮かびました。

 まず第1段階はその人と対面していて、自分と相手の顔が向かい合っているような状態。その人の顔を見て、「興味があるか、ないか」伺っていく。

 そこで興味があると思ったら、相手のピンときていないところを察知し、より興味を持ってもらえるように説明する。

 その中で最初は距離が離れているところから、だんだん距離が縮まっていく。

 3段階目の「検討します」では、まだ向かい合っている状態だけれど、徐々に第4段階目になると、周りの人間関係も含めた親身な話にもなって、もう同じ方向を向き始める。

 そして、最後の5段階目では、同じ方向を向いている状態で背中を押してあげる。

 河合さんの「営業は人と人の関係なんだよ」というお考えが、すごくよく伝わってきました。

河合:人は「失敗はしたくない」という不安な気持ちがあったり、一方では「自分の選択を信じたい」という気持ちがあったり難しいですよね。

 そこで段階を踏んで、互いが同じ方向を向いていければ、むしろ「応援されたい」「背中を押されたい」「自分の選択がよかったと思いたい」と思える。

 これを急に「1から5にするまでのトーク」をつくる、トレーニングをしていくとなると、結局は売るための練習で、YESと言わせるための方法論になってしまいます。

 そうなると、その場でYESが取れたとしても、後からNOを突き詰められたり、「誰のために売ってるの?」と方向性を見失ってしまう。

 星先生がまとめてくださったように、やり方ではなく、向き合っているところから、寄り添ってともにゴールを目指していく形で相手に対するあり方を意識できると、自然と「NO」を突きつけられることは減り、仲間や繋がりが生まれてくるのではないかと思います。

星:私の初の著書『スタンフォード式生き抜く力』でも触れましたが、ベイエリアのビジネスエリートたちは、それぞれ利己的に、エゴとエゴのぶつかり合いで戦っていると思いきや、みんな助け合って、関係を築いていく中で成果を出していくということが印象的でした。

 河合さんのお話は、その俯瞰的な部分をより具体的に落とし込んだお話で、非常に共感させていただきました。

河合:まさに、星先生が先の本で「生き抜く力のポイント」としてあげられていた、「聞き取る力」「共感する力」、そして「与える力」は、営業においても非常に重要だと強く感じています。

 第3段階の「検討します」の意味を考えるシーンでは、相手の言葉尻ではなく、その背景にあるものを聞けるかという点でまさに「聞き取る力」です。

 第4段階の、周りの反対がネックになっているとき、まずは自分から相手の状況をイメージする、つまり、お客様の状況に「共感する力」が重要です。

 そして、相手と同じ方向を向き、目の前のお客様に今できることをさせていただくという、「与える力」につながっていく。

「生き抜く力」は営業の本質でもあると感じます。ぜひ『スタンフォード式生き抜く力』を読んでいただきたいです。

※次回は、続編として、「次も会いたい!と思われる3つの習慣」というテーマでお話いただきます。ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。