特徴的なのは、航続距離を1回の充電で約180kmと抑えたことだ。その分、一般的なEVで車両コストの3分の1を占めるとされるリチウムイオン電池搭載量を減らして、車両価格を引き下げた。

 バッテリーなどコスト負担が重いEVを、安さが利点の軽自動車で実現することにはこれまで高いハードルがあったが、「やっと軽のEVが出来た」(星野朝子日産副社長)。この日産・三菱自による軽EV投入は、まさしく日本のEV普及を占う試金石となろう。

 両社はそれぞれのブランドの新車発表を行ったが、名称からして両社の違いがあらわとなった。

 日産サクラは社員の公募で決まった。「日本のEV時代を彩り、中心となる車になってほしいとの願い」(星野副社長)から、日本を象徴する花の桜に由来したとし、「日本のEVをここから咲かせます」(同)と意気込む。三菱自ekクロスEVは「安心して手軽に選べる軽EV」(加藤社長)を強調し、同社のekクロスシリーズにEVを加えたものとした。三菱自は、今秋には軽商用ミニキャブEVの再発売も予定している。

 価格の説明でも、両社の体質が出て微妙な差が生じている。星野日産副社長は「実質購入価格は、クリーンエネルギー自動車導入促進補助金の活用で178万円から。国の補助金に加えて各自治体補助金も使える」と説明した。一方、三菱自は加藤社長が「239万8000円からの価格設定だが、補助金の活用で実質購入価格は184万8000円からになる」と説明した。三菱自の方が、最低購入価格が6万円ほど高い。

 いずれにしても実質価格が180万円前後のEVが発売されることで、軽EVの普及につながるかどうかは注目される。今後、スズキ、ダイハツ工業、ホンダの軽EV投入の動きや価格設定にも影響を与えるだろう。

 一方で、この日産・三菱自の共同開発の軽EVが市場投入にこぎつけたことで、国際連合を組む仏ルノーとの関係が新たな局面に移行する流れが出てきた。

 特に、日産・三菱自と連合を組む仏ルノーが22年度に入り、EV事業を分離して新会社を立ち上げる構想を打ち出し、日産と三菱自に参画を要請していることが波紋を呼んでいる。