続いて2021年度を見てみると、運輸セグメントの営業赤字が大幅に縮小していることが分かる。営業赤字が最大なのは東京メトロの約237億円。続いて京成の約127億円、京急の約100億円、南海の約74億円となっており、都心に路線が集中している東京メトロと、航空需要落ち込みの影響を受けた空港アクセス路線の影響が大きいことが分かる。

 鉄道の営業費は固定費が占める部分が多く、乗客が増加すれば利益に直結する。定期利用者はテレワークの普及などが影響して、コロナ前の70~90%の水準(都市部ほど減少率が高い傾向にある)で停滞したままほとんど動いていないが、定期外利用者は2020年度から2021年度にかけて、首都圏では15~20%、それ以外の地域では10%前後増加しており、収支改善に直結した格好だ。

 運輸セグメントの収支が改善した結果、不動産セグメントの黒字と、レジャーセグメントの赤字のバランスが経営を左右するという各社共通の傾向が見えてくる。西武のようにレジャー部門の赤字が大きすぎる場合は赤字になり、東急のように他の赤字を全てのみ込めるほど不動産部門が強ければ黒字になってくる。

 レジャーセグメント自体も利用者の回復で経営は改善傾向にあるが、それでも西武HD、近鉄GHD、東急、京王、相鉄HDは120億~280億円の営業赤字を計上している。大赤字の発生源となっているレジャー部門だが、コロナ以前も決して利益率は高くなく、沿線の顔として歴史的に事業を展開してきた部分が大きかった。前述のようにアセットライト戦略の導入が続いており、レジャー部門再編の流れも加速していきそうだ。

運輸セグメントの営業利益は
15社中14社が黒字の見込み

 最後に各社の2022年度業績予想とも比較しておこう。今年度は南海を除く全社が運輸セグメントの営業黒字化を達成するとの予想で、うち阪急・阪神HD、東武、西武HD、小田急、京成は100億円以上の営業黒字を見込んでおり、運輸部門が利益に寄与するところまで持っていけるかが今年度の注目ポイントと言えるだろう。