ロックダウン下の上海から日本に“脱出”した人も
「やっと人間の世界に戻った」

 筆者は、前出の友人夫婦の紹介で、先日来日し都内のホテルで隔離期間を送っている40代の男性、汪さん(仮名)に、上海を脱出し日本の地に着いた経緯や心境を直接聞くことができた。

「成田空港に着いた途端、人間の世界に戻ったと思った!」と話す汪さん。

 それもそのはず、ロックダウン下の上海の自宅から浦東空港までの移動中は、人影がほとんど見られなかったという。

「空港に入ってからも、白い防護服を着ているスタッフばかり、お店の扉も全て閉じていて……まるで幽霊の世界のようで寒けがした。機内に搭乗してもCA全員が防護服姿だった。

 成田に着くと、働いているスタッフが普通の服を着ていて新鮮だった。自分は白い防護服を見慣れてしまったようだ。成田空港内外のお店では、久しぶりに買い物ができた」(汪さん)

 日本で久々に感じた“日常”に安堵したという。同時に、これまでの苦労が走馬灯のように思い出され、思わず涙があふれた。汪さんは、「これからは上海に残った家族と日本で合流することに集中したい」と今後を見据えた。

 彼の言葉を聞いて、筆者も一日も早く家族と日本で再会できる日が来るように祈った。一方で、日本社会に定着することにも別の苦難があるだろうとも思った。

 長引くロックダウンは、上海に住む多くの人にとってこれからの暮らしを不安にさせる出来事だった。そうした中、少なからぬ人たちにとって、「日本への移住」が選択肢に入り始めたようだ。日本在住の中国人が100万人を超える日も、そう遠くないのかもしれない。