腸内細菌叢との関連で注目される食物繊維。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、生活習慣病予防のための目標量として18~64歳の男性で1日21g以上、女性は18g以上を推奨している。目標量を満たすには豆類、キノコ類、海藻類のほか、少なくとも1食は玄米ご飯や全粒パンを食べるといい。
さて、一口に食物繊維といっても水溶性のペクチンや非水溶性のセルロース、消化されにくいデキストリンなど多種多様だ。どうやら、健康効果にも差があることがわかってきた。
米スタンフォード大学の研究グループは、全粒穀物に共通するアラビノキシラン(AX)と、タマネギやキクイモ類に含まれる長鎖イヌリン(LCI)の二つの水溶性食物繊維の精製物を使って生理的な作用を検証した。
参加した18人(男性8人、平均年齢56.9歳)はAXもしくはLCIに割り振られ、第1週は1日当たり10g(朝食時)、第2週は同20g(朝食・夕食時に各10g)、第3週は同30g(朝昼晩の食事時に各10g)を摂取。6~8週間を空けた後、成分を取り替えて同じことを繰り返した。
血清脂質や腸内細菌の質量を分析する手法で食物繊維の影響を解析した結果、AXの摂取期間は胆汁酸が増加し、悪玉コレステロール(LDL-C)が大幅に減少していた。研究者は「胆汁酸はLDL-Cから作られるほか、コレステロールの代謝・排出に働くので胆汁酸が増えた分、LDL-Cが減ったのだろう」としている。
一方、LCIはおなかに良いとされるビフィズス菌を増加させたが、1日30g以上では肝機能障害を示す「ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)」値と炎症を示す検査値が上昇していた。摂り過ぎには注意が必要な食物繊維、というわけだ。
ちなみに、日本の成人男女の食物繊維摂取量は平均14g前後だという。食事で補う分には過剰摂取とはほど遠い。ただし、ダイエットや便通改善のためにサプリメント頼みになっている方は、含有成分と量を確認し、漫然と飲み続けるのはやめておこう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)