プロ野球のロッテ・佐々木朗希選手が、史上最年少で16人目となる完全試合を達成した。国内外から注目と期待が集まる中、怪我なく野球人生を歩んでほしいと願うファンは多いはず。ただしスポーツにおける健康とは、体だけでなくメンタルヘルスも指す。アスリートの心の健康を支える「スポーツ心理学」の分野にはどのようなメリットが期待されているのだろうか。書籍『エディー・ジョーンズ わが人生とラグビー』(エディー・ジョーンズ著、ダイヤモンド社)を参考に、スポーツ心理学の可能性について考察する。(文/フリーライター 鈴木 舞)
世界的なラグビー指導者が痛感
メンタルヘルスケアの重要性
プロ野球チームのロッテは、2020年から「心のケア」を本格的に導入した。順天堂大学医学部付属順天堂医院、同付属浦安病院と連携し、選手全員に対してストレスや自律神経の定期的チェックを取り入れている(参考:サンケイスポーツ https://www.sanspo.com/article/20200211-MIZOTTAF4JMF7JPTVUVURLFK5A/?outputType=amp)
精神的な負担や疲労が心身に及ぼす影響は大きい。特にストレスは自律神経失調症の原因と考えられているほか、頭痛や不眠、体重増減といった体の不調を引き起こす。ストレスはメンタルにも影響し、モチベーション低下や不安感を招き、時にはうつ病を発症させる。
メンタルヘルスケアを怠ると、アスリートのパフォーマンスダウンや選手生命を左右するというわけだ。スポーツでは体が資本と思われがちだが、心も大切な資本。選手の心を守るための施策として、スポーツ心理学を用いる例も見られる。
たとえば、国際的なラグビー指導者であるエディー・ジョーンズ氏も、日本代表のヘッドコーチに就任してからスポーツ心理学のアプローチを採り入れた。スポーツ心理学の専門家の助言を参考に、2015年のラグビーワールドカップ前には選手とスタッフの臨時休日を増加。助言を受け入れた当時の心境について、ジョーンズ氏は著書でこう振り返っている。
「選手を深く理解し、彼らが信念を持って物事を判断できるような手助けができるなら、どんなテクニックでも身につけ、活用したいと考えていた」(『エディー・ジョーンズ わが人生とラグビー』より)