あらゆる職種の中でも人気が低く、労働生産性が低いのが「営業」でした。しかし、そんな時代は終わりを迎えようとしています。成長著しい最先端企業は、「できる営業」に多額の報酬を払い、企業の成長エンジンに「営業」を据えています。では、どのように「できる営業」へと生まれ変わればいいのでしょうか?『NEW SALES』では、これまでの古い営業から脱却し、新しい営業「NEW SALES」に進化する方法を紹介しています。本連載では『NEW SALES』のエッセンスを紹介。「NEW SALES」を実践すればあっという間に「売れる営業」に生まれ変わります。

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ハイパフォーマーが必ず実践している
たった一つのこととは?

 これまで私は、様々な企業の営業変革プロジェクトに携わってきました。その中で、ハイパフォーマー(高い成果を出している営業担当者)とローパフォーマー(十分な成果を出せていない営業担当者)の違いを調査・分析して分かったことがあります。

 両者の違いを生み出す要因は、多くの場合、「顧客事例の活用」にあります。ハイパフォーマーは、顧客に合った過去の事例をうまく活用できていますが、ローパフォーマーはそれをうまく活用できていなかったのです。

 なぜ、「顧客事例の活用」が重要なのか。

 ただ商品やサービスを紹介するだけの「プロダクト営業」ではなく、顧客の課題解決への道筋を提案する「ソリューション営業」の重要性が叫ばれるようになり久しくなりました。

 しかし、その「ソリューション営業」が最近では機能不全に陥っています。営業担当者が顧客に「御社の課題は何ですか?」と聞いても、顧客が自社の課題を分かっておらず、うまく答えられないのです。

「ソリューション営業」を実現するには、営業担当者が「御社にはこのような課題があるのではありませんか?」と仮説を提示する必要があるのです。この顧客の課題を営業担当者が提示するために、大変有効な武器となるのが、「顧客事例」なのです。

 自社の商品・サービスを用いて、ほかの顧客がどのような課題を解決し、どのような理想を実現したのか。
顧客の状態に近い他社事例を提示することで、「そういえば当社にもこんな課題があります」「弊社もそのような状態を実現したいです」という言葉を引き出すことができるのです。

 あるITシステム企業では、ローパフォーマーは商談で簡単な自社紹介をした後、ヒアリングをし、それに合わせて商品の紹介をしていました。

 一方、ハイパフォーマーは商談の最初に「この領域のITシステム導入が失敗する3つのパターン」や「失敗を回避し、ITシステムの導入に成功した同業界の事例」を説明してから、ヒアリングに入っていたのです。

 具体的な事例を紹介すると、顧客はITシステム導入における「課題」や「理想」をイメージしやすくなります。その上で商談を進める方が、顧客がリアリティを持って営業担当者の話を聞くことができます。

 ほかの事例をふんだんに紹介することで、他社の営業担当者よりも頼りになるという印象も植え付けられますし、ヒアリングでも積極的に顧客の状況を打ち明けてもらうことが可能になります。

##小見出しハイパフォーマーが必ず実践しているたった一つのこととは?##本文 これまで私は、様々な企業の営業変革プロジェクトに携わってきました。 その中で、ハイパフォーマー(高い成果を出している営業担当者)とローパフォーマー(十分な成果を出せていない営業担当者)の違いを調査・分析して分かったことがあります。 両者の違いを生み出す要因は、多くの場合、「顧客事例の活用」にあります。 ハイパフォーマーは、顧客に合った過去の事例をうまく活用できていますが、ローパフォーマーはそれをうまく活用できていなかったのです。 なぜ、「顧客事例の活用」が重要なのか。 ただ商品やサービスを紹介するだけの「プロダクト営業」ではなく、顧客の課題解決への道筋を提案する「ソリューション営業」の重要性が叫ばれるようになり久しくなりました。 しかし、その「ソリューション営業」が最近では機能不全に陥っています。 営業担当者が顧客に「御社の課題は何ですか?」と聞いても、顧客が自社の課題を分かっておらず、うまく答えられないのです。 「ソリューション営業」を実現するには、営業担当者が「御社にはこのような課題があるのではありませんか?」と仮説を提示する必要があるのです。この顧客の課題を営業担当者が提示するために、大変有効な武器となるのが、「顧客事例」なのです。 自社の商品・サービスを用いて、ほかの顧客がどのような課題を解決し、どのような理想を実現したのか。
 顧客の状態に近い他社事例を提示することで、「そういえば当社にもこんな課題があります」「弊社もそのような状態を実現したいです」という言葉を引き出すことができるのです。 あるITシステム企業では、ローパフォーマーは商談で簡単な自社紹介をした後、ヒアリングをし、それに合わせて商品の紹介をしていました。 一方、ハイパフォーマーは商談の最初に「この領域のITシステム導入が失敗する3つのパターン」や「失敗を回避し、ITシステムの導入に成功した同業界の事例」を説明してから、ヒアリングに入っていたのです。 具体的な事例を紹介すると、顧客はITシステム導入における「課題」や「理想」をイメージしやすくなります。その上で商談を進める方が、顧客がリアリティを持って営業担当者の話を聞くことができます。 ほかの事例をふんだんに紹介することで、他社の営業担当者よりも頼りになるという印象も植え付けられますし、ヒアリングでも積極的に顧客の状況を打ち明けてもらうことが可能になります。※p48の図表入る あるマーケティング支援会社では、商談を、過去の事例を用いることで、「案件化率(商談をした顧客が具体的な提案や検討に進む比率)」が大幅に上昇したそうです。 顧客が知りたいのは、商品・サービスに関する情報ではなく、同じ業界の企業が陥りがちな課題や成功事例。そう考え、初回の商談で使う資料を「同業界で陥りがちな課題」→「同業界の成功事例」→「商品・サービス紹介」という流れに変更したのです。 顧客の頭の中に、「理想」や「課題」のイメージを醸成した後で、売りたい商品・サービスの「価値」や「方法」を提供することで、成果を高めていきました。 顧客の状況と類似した事例を伝えることで、「理想→課題→価値→方法」というストーリーを、顧客と一緒に紡ぎ出すことができるようになります。顧客事例を活用することで、顧客にサクセスストーリーを知ってもらい、自社におけるストーリーをイメージしてもらうことができるのです。 紹介する事例を、顧客の共感を呼び起こす内容にすることも重要なポイントです。 そのためには、「理想」や「課題」について、顧客がそのシーンを頭の中に思い浮かべやすいよう、臨場感を持って営業担当者が語ることが大切です。具体的な数字や過去の顧客のコメントなどがあると、さらにいいでしょう。 まずは過去の取り組みを事例として伝えられるように準備しておくこと。加えて、顧客との商談前には、ほかの営業担当者に似た事例がないかを聞いておくことも重要です。

 あるマーケティング支援会社では、商談を、過去の事例を用いることで、「案件化率(商談をした顧客が具体的な提案や検討に進む比率)」が大幅に上昇したそうです。

 顧客が知りたいのは、商品・サービスに関する情報ではなく、同じ業界の企業が陥りがちな課題や成功事例。そう考え、初回の商談で使う資料を「同業界で陥りがちな課題」→「同業界の成功事例」→「商品・サービス紹介」という流れに変更したのです。顧客の頭の中に、「理想」や「課題」のイメージを醸成した後で、売りたい商品・サービスの「価値」や「方法」を提供することで、成果を高めていきました。

 顧客の状況と類似した事例を伝えることで、「理想→課題→価値→方法」というストーリーを、顧客と一緒に紡ぎ出すことができるようになります。顧客事例を活用することで、顧客にサクセスストーリーを知ってもらい、自社におけるストーリーをイメージしてもらうことができるのです。

 紹介する事例を、顧客の共感を呼び起こす内容にすることも重要なポイントです。

 そのためには、「理想」や「課題」について、顧客がそのシーンを頭の中に思い浮かべやすいよう、臨場感を持って営業担当者が語ることが大切です。具体的な数字や過去の顧客のコメントなどがあると、さらにいいでしょう。

 まずは過去の取り組みを事例として伝えられるように準備しておくこと。加えて、顧客との商談前には、ほかの営業担当者に似た事例がないかを聞いておくことも重要です。