あらゆる職種の中でも人気が低く、労働生産性が低いのが「営業」でした。しかし、そんな時代は終わりを迎えようとしています。成長著しい最先端企業は、「できる営業」に多額の報酬を払い、企業の成長エンジンに「営業」を据えています。では、どのように「できる営業」へと生まれ変わればいいのでしょうか? 2022年6月7日発売『NEW SALES』では、これまでの古い営業から脱却し、新しい営業「NEW SALES」に進化する方法を紹介しています。本連載では『NEW SALES』のエッセンスを紹介。「NEW SALES」を実践すればあっという間に「売れる営業」に生まれ変わります。
「売り込み」だけでは通用しない
「営業」という仕事に、どんなイメージを抱いていますか。私がSNSで「営業と聞いて思い浮かぶ人は誰ですか?」という投稿をすると、多くの人が著名なテレビ通販の創業者の名前を挙げました。
「ちょっと奥さま、見ていってください」
「この包丁は切れ味が鋭いんです」
「今からこの大根を切ってみますね」
「ほら! こんなにスパッと切れるんですよ」
「今ならこの商品がなんと9980円」
「とてもお買い得です」
「営業トーク」というと、一般的にはこんな「売り込み」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。確かに、「売る」ことが営業の重要な役割であることは間違いありません。しかし現在、幅広い業界で営業に求められる仕事は、もはや「売り込み」ではなくなっています。
かつて、営業という仕事の主な役割といえば、自社の商品・サービスの機能や性能に関する情報を顧客に提供することが中心でした。例えば企業向けの教育研修プログラムを売り込むなら、どんな教材を使い、どんな講師が授業をするのかを説明することが、営業の仕事だったわけです。個人向けに生命保険を売り込むなら、保険料や保障内容を紹介することが主な仕事とされていました。
しかし今では、顧客は営業担当者が商品やサービスの情報を伝えることだけでは満足しなくなっています。
1980年代には、様々な調査で次のようなことが明らかになりました。大型の商談で成果を出している営業担当者の共通点は、「顧客の課題を引き出し、解決策を提示していること」である、と。
これ以降、営業という仕事では、単に顧客に対して商品やサービスの情報を伝えるだけの「プロダクト営業」ではなく、商品やサービスを用いた課題解決を顧客に提案する「ソリューション営業」が大切であると言われるようになりました。
顧客の課題解決に向き合っているか?
商品・サービスの機能や性能といった情報を説明するだけの「プロダクト営業」に対して、「ソリューション営業」では顧客の考え方や置かれている状況などを知り、どのような商品・サービスを、どのように活用すべきなのかを顧客に提案する力が求められます。
顧客も単なる「プロダクト営業」よりも、有用性のある提案をする「ソリューション営業」を好むようになり、1980年代以降、営業の世界では徐々に「プロダクト営業」よりも「ソリューション営業」が主流になっていきました。
それを加速させたのがインターネットの普及です。
ネットを活用すれば、顧客はウェブ上で商品やサービスの情報を簡単に知ることができます。大半の商品・サービスの機能や性能については、いちいち営業担当者から説明を受けなくても、把握できるようになったのです。
インターネットの普及は、商品やサービスのコモディティ(汎用)化も引き起こしました。それぞれの会社が、ライバル会社の商品やサービスについてすぐに知ることができるようになったため、競合同士の模倣が容易になったのです。
営業が売るべき商品やサービスが、簡単にライバル会社にまねされるようになった。そんな競争環境の中で、これまでと同じように、ただ商品・サービスの情報を伝えるだけの「プロダクト営業」では、成果は上げられなくなってきました。
これからの営業は単に商品を説明するだけではなく、顧客に課題解決に向けた道筋を示さなければ通用しません。