あらゆる職種の中でも人気が低く、労働生産性が低いのが「営業」でした。しかし、そんな時代は終わりを迎えようとしています。成長著しい最先端企業は、「できる営業」に多額の報酬を払い、企業の成長エンジンに「営業」を据えています。では、どのように「できる営業」へと生まれ変わればいいのでしょうか? 2022年6月7日発売『NEW SALES』では、これまでの古い営業から脱却し、新しい営業「NEW SALES」に進化する方法を紹介しています。本連載では『NEW SALES』のエッセンスを紹介。「NEW SALES」を実践すればあっという間に「売れる営業」に生まれ変わります。

「AI(人工知能)が進化すれば営業は消えてなくなる」は本当か?Photo:AdobeStock

営業は消えてなくなるのか?

「インターネットで様々な情報を入手でき、テクノロジーで多様な業務ができるこれからの時代に、営業という仕事は不要である」

 数年来、こうした「営業不要論」がまことしやかに囁やかれています。私は、これは半分正解で、半分不正解だと思っています。確かにインターネットやテクノロジーの台頭は、営業という仕事を大きく変えつつあります。

 例えば、これまで顧客に商品やサービスの情報を伝えるのは営業担当者の重要な役割でした。しかしインターネットの普及によって、顧客は商品やサービスの情報を簡単に入手できるようになりました。営業が伝える情報に頼る必要はなくなってきています。

 これまでは、顧客の情報を収集し、それに合わせた提案をすることも営業担当者の大切な役割でした。

 しかしこれも、CRM(顧客情報管理)やSFA(営業支援システム)、MA(マーケティング支援システム)、セールスイネーブルメント(営業力強化システム)などのITツールを使えば、誰でも簡単に顧客に合わせた提案ができるようになっています。

 これまでのように顧客の情報を収集し、それに合わせて売りたい商品やサービスを伝えるだけの営業担当者は、もう通用しません。

 いつまでも同じような仕事を続けている限り、営業という仕事は、ITツールやAIに取って代わられるわけです。

 そういう意味では、巷の「営業不要論」もあながち間違っているとは言えません。

生き残る営業は「ドクター」と
同じくらい難しい判断を下す

 しかし、これから本当に必要になる新しい営業「NEW SALES」を実践できる人は、こうした環境変化の中で、むしろ輝いていきます。テクノロジーの進化に飲み込まれることなく、高度な専門スキルを駆使して、成果を伸ばしていくのです。

 想像しづらいなら、ドクター(医師)を思い浮かべてください。

 ドクターは、患者の身体のことはもちろん、仕事や家庭の状況、本人の意思を踏まえて総合的に判断し、治療方針を決めていきます。テクノロジーが進化し、一部の機能をAIが担うようになったとしても、総合的な治療方針を決めるのはドクターであり続けるはずです。それほどドクターの意思決定は複雑で高度なものだからです。

 同じように、今後は営業の仕事にも高度な判断が求められるようになります。

 顧客の状況や意思に合わせてどんな商品やサービスを提案し、どのように活用してもらうのか。顧客一人ひとりの要望を深く聞き、考え、これまで以上に緻密な提案をするのが「NEW SALES」の仕事です。

 別の視点から見ると、「NEW SALES」は、スポーツジムのパーソナルトレーナーとも似ています。体を鍛える方法そのものは、世の中にあふれています。それでもほとんどの人は、一人で体を鍛えようとすると挫折してしまいます。

 一方、パーソナルトレーナーは顧客と共に理想の姿を描き、隣で激励し、サポートし続けることで、顧客を目標に導きます。パーソナルトレーナーのような役割は、テクノロジーで簡単に代替されることはありません。

 営業という仕事もこれからは、パーソナルトレーナーのように顧客を支援し、顧客の目標達成に寄り添う必要があります。

 そのために、顧客の志向や意思に合わせて商品やサービスを提案し、そこに向けた動機付けまでサポートするのが「NEW SALES」の仕事なのです。『NEW SALES』を読めば、AI(人工知能)の台頭やテクノロジーの進化にも負けない、新しい時代の営業へと生まれ変わることができます。