インフレが生活を脅かし、金融市場を揺るがしている。しかし、今後のリスクシナリオとしては、スタグフレーションにも注意が必要だ。詳しく解説しよう。(経済評論家 塚崎公義)
インフレと不況の共存が生活を脅かす
「スタグフレーション」到来か
原油価格や食料価格などが高騰し、世界的にインフレが進んでいる。インフレが金融引き締めをもたらすという懸念から、世界の金融市場にも大きな影響が生じている。日本も、欧米ほどではないが、物価が上昇して庶民の生活を脅かしている。
消費者物価が上がれば、消費が冷え込んで景気が悪化する可能性がある。それとは別に、中国の景気悪化などが先進国の輸出を減らして世界的な景気悪化をもたらす懸念もある。そうした懸念については、4月8日の拙稿『株価は好調でも楽観は禁物!「実体経済のリスク」を解説』で指摘した通りだ。
そうなれば、インフレと不況が共存する「スタグフレーション」となり、財政金融政策は難しいかじ取りを迫られることになる。景気回復を重視すればインフレが悪化しかねず、インフレ抑制を重視すれば景気がさらに悪化しかねない。
もっとも、原油価格が上がり続けることは考えにくいし、中国の景気は中国政府の景気対策で回復すると期待できよう。少なくともどちらかの問題が緩和されれば、スタグフレーションから脱して、「単なるインフレ」か「単なる不況」になるので、財政金融政策によって対応しやすい状況となるだろう。
加えて、そもそもこうしたスタグフレーションには、救いもある。景気が悪化すれば、インフレ圧力が弱まることが期待できるのだ。
バブル期を除けば
経済予測には需要予測が重要
一般に先進工業国の経済を予想する際には、需要を予想することが重要だ。農業国であれば生産力が重要になるため、経済を予想する際には天候や農業労働者の状況などを観察することになるが、先進工業国はそうではない。