党長老の間で浮上する
「李克強待望論」

 現在、中国共産党No.2の李克強首相は7月に67歳を迎える。習近平総書記より2歳若く、「七上八下」(最高指導部のメンバーは、党大会時の年齢が67歳以下であれば留任、68歳以上であれば離任)という暗黙のルールには引っ掛からない。

 李克強首相自身は、今年3月、全人代(中国の国会)後の記者会見で、「首相として最後の会見だ」と明言したが、党長老の間では待望論が浮上している。

 中国には、3大派閥が存在する。江沢民元総書記を中心とする「上海閥」、胡錦濤前総書記を中心とする「団派」(中国共産主義青年団出身者)、そして習近平総書記主席を中心とする「太子党」(革命元老の子弟の“2世議員”)である。このうち、「団派」の頂点に立つのが李克強首相である。

 李克強首相については、2年前、習近平指導部が力を入れてきた脱貧困政策について率直に現状を吐露したり、厳しい「ゼロコロナ政策」が継続される中、マスクなしで地方の大学や村を視察するなど、習近平総書記とは一線を画す言動が注目されてきた。

 李克強首相が総書記に、とはならないにしても、彼が今後も常務委員として引き続きとどまる、あるいは彼の側近が要職に就くかどうか、影響力が注目されるところである。

ポスト・プーチンを巡る
権力闘争が顕在化

 一方のプーチン大統領は、6月17日、ロシア版ダボス会議と呼ばれるサンクトペテルブルク国際経済フォーラムで演説し、「アメリカやEUなどからの制裁は成功していない」と強調して見せた。重病説がくすぶる中、懸命のパフォーマンスだったろう。

 こうした中、興味深いのが、ポスト・プーチンと目される一人、ロシア大統領府のキリエンコ第1副長官の動きである。

 キリエンコ第1副長官は、ウクライナ侵攻開始後、東部ドンバス地方の親ロシア派などを担当する責任者に就任しているのだが、6月16日付のイギリスの有力紙、タイムズによれば、近頃、「ドネツク人民共和国」「ルハンシク人民共和国」の要職を自らの側近に入れ替えたという。

 ロシアの国営原子力企業「ロスアトム」の社長も歴任したキリエンコ第1副長官の行動は、穀物輸出をにらんで港湾物流が鍵になると判断した権益確保、つまり、プーチン後を視野に入れた動きと受け止められている。

 現在、プーチン大統領の後釜として有力視されているのはモスクワのソビャニン市長、メドベージェフ前首相、キリエンコ第1副長官の3人。その中でも、この先や戦後復興をにらんでいち早く動きを見せているのがキリエンコ第1副長官で、今後は他の有力者たちもポスト・プーチンへの動きを顕在化させるものとみられる。