7月の参議院選挙で
問われる日本の覚悟

 習近平総書記とプーチン大統領、足元が盤石とは言えない分、結束力は強くなり、アメリカなどへの対抗心も倍増される。

 中国では、先頃、「福建」と命名された3隻目の空母が進水した。ウクライナから購入した「遼寧」、国産の「山東」に続く空母である。

「福建」とは、習近平総書記が30代前半、15年もの間、厦門(アモイ)市の副市長や党委員会副書記として勤務した福建省にちなんだ名前だ。

 中国海軍は、これまで一度もまともな戦争をしたことがないとやゆされてきたが、空母3隻体制を整えたことから、台湾侵攻に向け、大きな戦力を手にしたことになる。

 また、ロシアも、ウクライナ侵攻後、日本を「非友好国」とみなし、北方四島海域だけでなく、日本海や房総沖などにも艦船を南下させ示威行動を続けている。今のロシア軍に、たとえば北海道に侵攻するような余裕はないが、極東だけで8万の兵力があることは考慮しなければならない。

 加えて、先に述べたサンクトペテルブルク国際経済フォーラムには、ロシアへの投資に関心を示す120カ国余りを集め、ロシアの健在ぶりと同時に、アメリカなどに必ずしも同調しない国が世界にはこれだけあることを示した。

 そうした中、日本では6月22日に参議院議員選挙が公示され、7月10日の投開票に向けて本格的な選挙戦がスタートした。

 物価高や円安、ウィズコロナ時代の経済政策が争点となるが、防衛費増額問題についても議論してほしい。

 岸田文雄首相は、アメリカのバイデン大統領との首脳会談で防衛費増額を公約し、6月10日、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議でも同様の公約をした。

 岸田首相はその翌週、安倍晋三元首相や実弟の岸信夫防衛相が強く留任を求めていた防衛省の島田和久事務次官を退任させる人事を決めている。これは、焦点となる防衛費増額を、自身主導、そして、安倍元首相が唱える国債ではなく税収の範囲内で行うと宣言したに等しい。

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 しかし、日本を取り巻く状況を見れば、アメリカが求めるNATO並みのGDP比2%(現在の5兆4000億円に加えさらに5兆円)までは引き上げられないにせよ、数兆円の上乗せは不可避である。

 もちろん、「5兆円もあれば、消費税率2%(4.3兆円分)引き下げることができる」「5兆円もあれば、年金受給者1人当たり年間12万円を追加支給(4.8兆円相当)できる」「5兆円もあれば、医療費の窓口負担をほぼゼロ(5.2兆円必要)にできる」という考えもあるだろう。

 私自身もこういう政策が実現すればいいと思う。だが、現実は直視すべきだ。そして、選挙後は、年内に改定する国家安全保障戦略、防衛大綱、具体策を示す中期防衛力整備計画の中に、防衛費増額や防衛装備品の強化はきちんと明示し、来年度の予算編成にも反映させてほしい。今ほど、日本の覚悟が問われている時はない。

(政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師 清水克彦)