毎日10件、架空のクライアント向けに戦略提案を考える
では、アナロジー思考はどのようにして身につければいいのでしょうか。
私が推奨するのは「毎日10件、架空のクライアント向けに戦略提案を考える」というものです。
私は新卒でコンサルティング会社に入社したため、事業会社での就業経験もなければ、特定の業界でのコンサルティング経験もありませんでした。つまり、アナロジー思考のもとになる知識を一切持ち合わせていませんでした。このときに大いに役立ったのが経営コンサルタントの大前研一氏が推奨する方法です。
大前氏の著書に書かれていたのは、電車に乗っているときに窓から見えた広告の企業に対して、戦略提案を考えるというものです。1駅ごとにこれを実施していくことで、会社まで5駅あれば、往復で10件の戦略提案を考えることができます。
例えば、トヨタ自動車の広告が出ていたら、社長の豊田章男氏をイメージして、何がトヨタ自動車の最大の課題かを考えます。正解はないので、自分の持っている知識をもとに考えていけば十分です。
●前期は過去最高益を記録したと新聞で読んだ気がするが、テスラが日本全国で本格展開するまでに何をすればいいのか
●そういえば、父親がトヨタ車からホンダ車に買い替えると言っていたが、確かホンダ車のディーラーから郵便でDMが届いたことがきっかけだと聞いた気がする
●そういえば、最近はSNSやe-mailで受け取ったDMは一切見ずに削除しているけど、紙の郵便で届いたものは全部開封しているな
●先日アパレルブランドから郵便でDMを受け取ったことがきっかけで、久しぶりに店舗に行ったな
などなど。
実際に誰かに発表するわけではないので、内容の質にこだわる必要はありません。それよりも、できるだけ幅広い業界について考えること、そして自分が持っている知識や常識を総動員することを心掛けましょう。
この練習を繰り返すことで、幅広い業界に興味を持てば、新聞の読み方や街の歩き方、友人との会話の内容も変わってきます。
アナロジー思考を練習するための材料は、皆さんのまわりにいくらでも転がっています。
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。日本コカ・コーラを経て、創業期のリヴァンプ入社。アパレル企業、ファストフードチェーン、システム会社などへのハンズオン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。その後、支援先のシステム会社にリヴァンプから転籍して代表取締役に就任。退任後、経営共創基盤(IGPI)に入社。
2013年にIGPIシンガポールを立ち上げるためシンガポールに拠点を移す。
現在は3拠点、8国籍のチームで日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。
IGPIグループを日本発のグローバルファームにすることが人生の目標。
細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。
『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。