選手が100歳まで生きたいと言えば、オギャーと生まれた0歳の場所と、亡くなる100歳の場所を決めて、そこにそれぞれバレーボールを置いて、体育館の床に人生全体の時間軸を描きます。そして、今の年齢のところにも別のボールを置きます。さらに次のオリンピック、その次のオリンピックなどのタイミングがわかるように、これらの大会・イベントが訪れる場所にもバレーボールを置いていきます。

 これらの時間軸上を歩いてもらったり、亡くなるときの自分の場所まで行ってもらったりして、そこからから振り返って現時点の自分にアドバイスをしてもらったりします。

スポーツ選手のメンタルケアが「常にポジティブ思考」でなくてもいい理由

 すると、「まだ、こんなに長い期間がある」「次のオリンピックもチャンスがあるかも」「このオリンピックのときは指導者になっていたいな」など、自分の人生全体の可能性に気づいて、閉じていた自分の世界から抜け出すことができたり、心のモヤモヤが晴れたり、次に向かって動き出すエネルギーを取り戻したりすることがあります。

 落ち込んでいる時点では顕在化していなくても、選手自身は潜在的にどこかで「自分の人生はまだまだやれる」「まだやれることがある」と知っているのだと思います。

 困っている人や悩んでいる人が身近にいると、何かアドバイスしたくなる。その気持ちはとても大切なものだと思います。ですが誘導することなく、ただただ聞いてあげることも大切にしていただきたい。「そうなんだね、本当に辛いよね。」と。

 本当に辛い状況にある人にとっては、無理にポジティブに引っ張られることが違和感だったり、プレッシャーになったりすることもあります。時には焦らず時間をかけて、「きっと浮上していく」と信じて共にいる、見守る。そんな“心の広さ”を持てるようになるとよいかもしれませんね。

誰かが信じてくれることで
発揮できる力

 アメリカの臨床心理学者・カールロジャーズは、「人間には自己実現する力が備わっている。だから、大切なことはそれが湧き出てくる関係性や、場づくりをすること」と、提唱しました。相手の気持ちに共感し、評価・否定せずに肯定的に聞くことを大切にしましょう、と。