肥満は閉経後乳がんのリスクだが、閉経前の若年層は痩せていたほうが乳がんになりやすい。ただし、この“常識”は欧米のデータから導かれたもので、元々の体格が違う日本人にも当てはまるかは曖昧だった。
むしろ、欧米とは逆に、閉経前の若年層でも体格指数(BMI)の上昇に従って、乳がんリスクが高くなるという報告もある(国立がん研究センター:国がん)。閉経前であってもBMI30以上の女性は、BMI23以上25未満の女性より2.25倍、乳がんリスクが高いというのだ。
この説を検証するため、東京大学医学部附属病院乳腺・内分泌外科のグループは、健康保険組合から収集したビッグデータを使い、BMIと閉経前乳がんとの関係を検討した。データは2005年1月~20年4月に健康診断を受けた45歳未満の女性、78万5703人分。年齢の中央値は37歳、BMIの中央値は20.5だった。
1年以上の追跡期間中に5597人(0.71%)が乳がんを発症。診断時の年齢の中央値は44歳だった。年齢と喫煙歴、飲酒歴などの影響を調整して解析した結果、日本の若年女性でも、BMI22以上から乳がんの発症リスクが明らかに下がることが示された。
たとえば、BMI25以上30未満(日本肥満学会の基準:肥満1度)の乳がんリスクは19%減、同30以上(肥満2度以上)では23%減だった。乳がん予防の視点からすると、日本の若年女性も欧米と同様にBMI22超の“普通体重~ぽっちゃり”が望ましいようだ。
研究者は「日本人女性の乳がん発症年齢のピークは40~50歳と欧米の70代より若い。閉経前の若年層は欧米より痩せているためだろう」と推測している。
先にあげた国がんの報告でも、別に「痩せ」を推奨しているわけではなく、がん以外の病気にも配慮したBMI21以上25未満の普通の体重を推奨している。
ちなみに、最新の国民健康・栄養調査(厚生労働省)によると、20代女性の20%、30代でも17%がBMI18.5未満の「痩せ」だ。遅くとも30の声を聞いたら健康的なBMIを受け容れていこう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)