TSMCとサムスン電子の決算比較
ビジネスモデルの特徴と営業利益は?

 2022年4~6月期の半導体業界は、メモリ半導体を主体として収益を得ている半導体メーカーの業績拡大ペースが鈍化した。TSMCとサムスン電子の連結決算を比較すると、それがよく分かる(サムスン電子は速報)。

 ビジネスモデルの特徴として、TSMCは5ナノや次世代のロジック半導体の生産能力に磨きをかけている。それによってTSMCはアップルやエヌビディアなどの顧客が設計・開発したチップの製造を多く受託し、急成長した。

 一方、サムスン電子はスマホなどに加え、メモリ半導体に強みを持つ。近年はTSMCとの差を縮めるため、ファウンドリ分野での設備投資が積み増された。

 4~6月期のTSMCとサムスン電子の連結決算のポイントは、営業利益だ。TSMCの営業利益は2621億台湾ドル(約1兆2000億円)で、12年来の過去最高を更新。前年同期と比べると79.9%も増加した。

 他方、サムスン電子の営業利益は同11%増の14兆ウォン(約1兆4500億円)で、増益率は20年1~3月期以来の低水準だった。半導体事業はサムスン電子の営業利益の6割を稼ぐ。特に、メモリ半導体は稼ぎ頭だ。サムスン電子の世界シェアはNAND型フラッシュメモリで約34%、DRAMで約42%に達する。

 世界のメモリ半導体業界は、在庫調整局面にシフトした。それが、サムスン電子のメモリ半導体事業の成長鈍化につながった。TSMC経営陣も、在庫調整が進むとの認識を示した。

 メモリ半導体の需要が減少した一因は、中国経済の急速な減速だ。ゼロコロナ政策は人流・物流を寸断した。個人消費の急減によってスマホなどの需要が低下し、メモリ半導体需要を押し下げた。テレワーク拡大の一服もあり、世界全体でパソコン需要が減少し始めている。

 そうした結果、メモリ半導体は値下がりし、サムスン電子の営業利益は伸び悩んだ。メモリ半導体の受託製造を手掛ける台湾の力晶積成電子製造も、需要減少に直面している。メモリ大手の米マイクロンでは、6~8月期の収益見通しが市場予想を下回ってもいる。