英語が通じない日本、一方台湾は…

 バン・タイさんは、実際に自分の手でロボットを作りたいという夢がある。そのために日本の大学にも留学したが、道をはばむのは日本語だ。

「専門書を手にしても、日本語の表現が難解で、日本語での情報収集に壁を感じています」と話すが、彼がもし英語を学んでいたら、すでに彼のロボットは完成していただろうか。

 バングラデシュ出身のムバラク・アリさん(仮名)は、1970年代に留学生として来日したが、修士課程ですら英語で学位を取得できないという状況に困惑した経験がある。今でこそ、英語での学位取得が可能な大学も出てきて、アリさんも「日本もだいぶ国際化が進んだ」と受け止めている。それでも、今なお来日するバングラデシュ人はあることに驚くという。

「それは『先進国なのに英語が通じない』ということです。バングラデシュ人は『日本はG7にも加わる先進国だから、当然英語が通じる』と思い込んで来日しますが、特別な場所を除いて通じないため意外に思ってしまうのです」(同)

「日本は島国だから仕方がない」とも思う。だが、台湾に目を向ければ、なぜかグローバル人材が多い。台湾は教育熱心な家庭が多く、ごく普通の家庭でも自分の子どもを積極的に海外留学させているのだ。欧米留学ともなれば高額な留学費用が必要だが、台北出身の林慧文さん(仮名)によると、「台湾では大家族になることで、費用を捻出する風潮があります」という。

「台湾人は次世代育成をとても大切にしており、欧米留学の費用は率先して祖父母が負担する傾向が強い。もし祖父母にお金がない場合は、三世代が同居することで留学費用を捻出します」(同)

 一方で、中国・大連出身の張玉さん(仮名)が、日本で生活して強く感じたのは、日本の家族関係の希薄さだった。最近は、特に育児の放棄や子どもの虐待など耳をふさぎたくなるニュースが多い。張さんは「日本では、社会の最小単位である家族を維持することすら難しい。私たちが想像する以上に、日本では貧困が進んでいるのではないでしょうか」と案じている。

 安倍晋三元首相の銃撃事件は、都内の中国人の間でも衝撃が走り、一部の中国人留学生は「日本といえば“安心・安全な国”だったはず」とショックを受けていた。他方、以前に起きた新幹線や京王線車内での無差別殺傷事件を知る留学生の中には「中国では地下鉄や高速鉄道の乗車時には手荷物検査を行っている」と、祖国でのテロ防止の徹底ぶりを再評価する者もいた。