「日本人女性からは敬遠される」生涯通じて住めない

 インド出身のディネッシュ・チャブラさん(仮名)は、日本の有名企業M社に就職した。超エリートの彼が2019年にM社を辞めた理由は、「女性の友人ができない」というものだった。意外な理由だが、これは結婚適齢期にある人にとっては大変切実な問題である。

「最終的にはマッチングアプリを使いましたが、対象となるインド人女性は多くはない上、日本人女性からは敬遠されました。いつも女性に人気の英国人の親友がうらやましかったくらいです。残念ながら、日本では将来のパートナーになり得る人は見つかりませんでした」

 チャブラさんが今生活しているのは、ドイツのベルリンだ。社内には中国人やマレーシア人もいる。こうした異なる国籍を持つ同僚たちと、互いの文化を紹介しあう雑談のひとときがとても楽しいという。

 インドといえば、筆者の恩師に、生涯を日本人のベンガル語教育に力を注いだコルカタ出身の女性がいた。高齢になっても“架け橋”であり続けようと、不自由な体を引きずりながら、司法通訳として法廷に臨んでいた。しかし晩年は難病を患い、公団住宅での一人暮らしが難しくなった。彼女はもともと日本に骨をうずめる覚悟だったが、6年前、日本での老後の不安と孤独に、重い足取りで祖国に帰っていったことを思い出す。

 日本に行けばたくさん稼げる。日本の生活は安心・安全・清潔で、日本製は高品質で、日本人も勤勉でマナーがいい。――それが一昔前のアジア人材の来日動機だった。しかし今、彼らが直面するのは想像を超えた“ギャップ”だ。

 移民国ではない日本だが、外国人材は欠かせない。その外国人材に選ばれる国になるための制度改善も待たれるが、それ以上に「日本では人として幸せな生活が送れるのか」という本質的な問題が潜在する。憧れたジャパン・ドリームだったが、彼らの中では徐々に色あせつつある。