さらに、トヨタ販社の全車種併売に踏み切ってから丸2年が経過する中で、特別な販売施策を実施する直営のトヨタモビリティ東京の1社を除いて、販社をすべて地場資本に譲渡している。トヨタ国内販社258社、約5000拠点は、かつてのクラウンを販売するトヨタ店やカローラを販売するカローラ店といった区分からの脱皮を図り、軽自動車から高級車までトヨタブランドのバリエーションを抱えつつ、顧客と長期的な関係を築くことで生き残りを図ることが求められている。

 トヨタの21年度(21年4月~22年3月)の国内生産は276万843台、前年度比5.4%減で前年に続いて300万台を割り込んだ。コロナ禍による部品供給網の混乱に半導体不足の影響から1976年度以来の低水準となった。国内販売は、軽自動車含みで139万5920台、9.3%減と2年連続の減少だ。

 今年1~6月のトヨタ国内新車販売台数は、「ヤリス」「カローラ」「ルーミー」が登録車でトップ3を確保するなどトヨタの強さを示したが、トヨタといえども人気車の納期遅延は深刻な状況となっている。トヨタの21年度世界生産は856万9549台で4.7%増と3年ぶりに前年を上回ったが、トヨタとしても国内生産・国内販売の打開が課題となっている。

 すでに日産自動車とホンダが国内生産100万台を維持することを打ち出していたが、ともに100万台確保は困難な状況となっている。これに対し豊田章男社長は、かねて「国内の年間300万台生産はグローバルで生き抜くためにも死守する」を明言しており、この22年度は国内生産で3年ぶりに300万台ラインへの回復を計画していた。だが、7月も新型クラウンの生産主力工場である元町工場と高岡工場の生産停止など厳しい状況が続いており、300万台達成は秋以降の生産回復の動向次第となっている。

 一方で、国内販売では昨年にネッツトヨタ愛知・レクサス高輪といったトヨタ販社で不正車検が相次いで露呈するなど、トヨタらしからぬ国内営業のひずみが表面化している。今回の国内販売トップ交代は、人心一新によって国内販売の正常化にはずみをつけていくことも狙いにあるといえよう。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)