安倍氏警護の批判に「的外れ」が多い理由、SPの人数や銃声後の反応は真因とずれNurPhoto/gettyimages

安倍晋三元首相が銃撃され、亡くなるという衝撃的な事件から約3週間が経過した。多くのメディアが警護体制の問題点を指摘しているが、その多くは「SPの人数不足」などの表面的な批判に終始している。中には「身をていして守れていなかった」という声もあるが、警護業務をなりわいとするプロの目から見ると「そこではない」と言いたくなる。本当にレベルの高い警護とは、事前準備を徹底して「身をていさずに守る」ことだからだ。そう言い切れる要因を詳しく解説する。(国際警備会社「CCTT」代表取締役 小山内秀友)

必ずしも間違いではないが
安倍氏警護の批判には「的外れ」が多い

 今回の安倍元首相襲撃事件について、多くの方が、「SPの人数が足りなかった」「SPの配置が悪かった」「1発目の銃声を聞いてからの反応が遅かった」「身をていして守ることができていなかった」といった意見を述べています。

 これらの意見は間違いではありませんが、警護業務をなりわいとするプロの目から見ると、「そこではない」と言いたくなります。

 確かに、SPの人数や配置、1発目の銃声が聞こえた際の反応なども問題ではあります。しかし、ここに焦点を当ててしまうと、今後の対策が、SPの増員、配置場所の再検証、銃声が聞こえたときの反応訓練、といった表面的な対応に集中してしまいます。

 それでは、警護における事前準備や教育・訓練など、根本的な問題への解決ができなくなってしまいます。

 襲撃の中には、本当に守ることができないような状況もあります。この世の中に100%安全な所などありませんし、100%完璧な警護というものも存在しません。私たちボディーガードは、さまざまな努力と準備を重ねて、少しでも警備対象者の安全性を上げていくという切磋琢磨をするだけです。

 そのため、過去の襲撃事例を見ると、「このような状況ならば、守ることができなくても仕方がなかった…」と思えるものも数多くあります。しかし、今回は違いました。容易に守ることができた状況でした。