メタ認知でドーパミンラッシュからの
記憶と集中力アップ!

 さて、メタ認知能力が高いと学びの効果が高いのですが、このことを脳科学の視点から解説していきましょう。

 まず、私たちが、幸福感や快楽を感じると脳の中の「報酬系」といわれる脳内回路が活躍します。

 私たちが「幸せだなあ」「気持ちいいなあ」などと感じている時、脳内でドーパミンが分泌され報酬系が活性化されています。

 それにちなんでドーパミンは「快楽物質」と呼ばれています。

 さて、そのドーパミン。

 実は私たちが新しいことを学んだ時に、報酬系が活性化されて分泌量が増えることがわかっています。[3]

 確かに、わからなかったことが理解できたり、難しいスキルをマスターしたりする時に嬉しかったり、スカッとしたりしますね。

 その感覚は、実は、快楽の感覚と同じところからきているわけです。

 まさに、脳にとって「学びは気持ちいい」のです。

 さて、その報酬系を活性化させるドーパミンですが、ワーキングメモリーを活性化させたり、記憶の定着を促したりして学習に重要な役割を果たしています。[4]

 そしてこのドーパミンは、何かを学んだ時だけでなく、新しい情報を学べると期待するだけでも分泌されるのです。

 知りたいと思えば思うほど、つまり、好奇心が高ければ高いほど、ドーパミンのレベルが上がり報酬系がさらに活性化する。[5]

 新しい情報を期待するというのは、自分がそのこと自体を知らないことを認識することが前提となるのです。

 つまり、自分が知らないと知る「メタ認知」を持つことで、ドーパミンレベルが上がり、学習効果が上がるのです。

 同様に自分の知識や学びに関するメタ認知を持つことで、学習効果が格段に変わってくることがこれまでの「学びの科学」で確認されてきました。

簡単に始められる
メタ認知のトレーニング

 私たちのメタ認知能力はトレーニングで伸ばしていくことができます。

 それゆえ、最先端の教育現場でも「メタ認知」がキーコンセプトの一つになっているのです。[5]

 メタ認知を意識した学習方法を取り込むことで、メタ認知のスキルが向上し、学習効果が上がる。

 みなさんの学習習慣にぜひ取り入れていただきたいメタ認知ルーティーンを拙著「脳科学が明かした! 結果が出る最強の勉強法」でも数多く紹介しています。

 今回はそこから一つだけ手軽な方法をご紹介いたしましょう。

【学習ジャーナル】
 1日の最後に学習日記(ジャーナル)をつける。

 寝る前がお勧め。

 下記の点のいくつかに焦点を置いて毎日5~10分くらいの簡単なものでかまいません。

 目的は自分の学習や知識に目を向ける習慣をつけることでメタ認知力をトレーニングすることにあります。

 

1.今日の勉強前と後で自分の知識やスキルがどう変わったか

2.今日の学習目標は達成できたか。明日の予定や目標をどう変更するか

3.今日の勉強法やストラテジーはどうだったか。効果的と感じたか

4.自分の得意不得意や、強み弱みなどで、感じたことはあるか

5.次回の勉強での改善点はあるか。あるならどうするか

 この学習ジャーナルでメタ認知力がアップします。

 他のメタ認知トレーニングと組み合わせて、ぜひお試し試いただき、学習効果を最大限にアップしてください!

スタンフォード式生き抜く力』にある各種トレーニングなどとも組み合わせると効果絶大です。最新脳科学に基づく学びの科学をぜひ実践してみてください。

【参考先】
*1 Muijs, D. and Bokhove, C. (2020). Metacognition and SelfRegulation: Evidence Review. London: Education Endowment Foundation.
*2 Gregory Schraw, Rayne Sperling Dennison, Assessing Metacognitive Awareness, Contemporary Educational Psychology, Volume 19, Issue 4, 1994, Pages 460-475.
*3 Stanislas Dehaene, How We Learn: Why Brains Learn Better Than Any Machine . . . for Now, Viking: USA, 2020.
*4 Ryan T. LaLumiere, 5 - Dopamine and Memory, Editor(s): Alfredo Meneses, Identification of Neural Markers Accompanying Memory, Elsevier, 2014, Pages 79-94.
*5 Kang MJ, Hsu M, Krajbich IM, et al. The Wick in the Candle of Learning: Epistemic Curiosity Activates Reward Circuitry and Enhances Memory. Psychological Science. 2009;20(8):963-973.
*6 Bransford, John D., Brown Ann L., and Cocking Rodney R. (2000). How people learn: Brain, mind, experience, and school. Washington, D.C.: National Academy Press.