無制限の指し値オペ継続という
日銀の金融緩和は既に限界か?
この手法は、導入当初はある程度機能して金利の操作を実施できたものの、アメリカがコロナ禍によるサプライチェーンの混乱と需要の押し上げによって発生したインフレを抑制するための対策として、2021年末にテーパリング、すなわち金融緩和策を維持しながら国債の大量買い入れを段階的に縮小し、市場への資金供給を引き締めることで最終的には金利引き上げに転換する方策を示唆し始めたころから、様相が変化する。
テーパリングの実施、およびアメリカの政策金利の利上げ時期はいつかとの観測が飛び交い、この頃から日米欧の金融緩和策は足並みが乱れ始めた印象がある。
実際にアメリカの自国国債などを買い入れる量的緩和は2022年3月で終了、2022年中にゼロ金利政策を解除して利上げを再開する考えも示されたことで、特に日米の政策金利差が今後拡大することが決定した。
その後インフレの加速に対応するため、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げの開始時期および利上げ幅も大きく前倒しし、2022年3月に0.25ポイント(0.00~0.25%)、5月に0.5ポイント(0.50~0.75%)、6月には0.75ポイント(1.25~1.50%)、7月にも同じく0.75ポイント(2.00~2.25%)と矢継ぎ早に金利を引き上げ、僅か半年ほどの期間でゼロ金利から2%台の水準に達している。
このようなアメリカの政策金利引き上げの状況下でも、日本の金融緩和策は維持・継続されている。先述のイールドカーブを日銀が適正と考える水準に維持するため、必要に応じて無制限の指し値オペを実施し、毎日1.5兆円もの国債を買い入れることで、主に新発10年物国債の金利を日銀が目安とする0.25%以下にするよう誘導し続けているのは周知の事実だ。
FRBおよび欧州中央銀行(ECB)の利上げを受けて国内でも金利が上昇するかに注目が集まるなか、6月にはこの“0.25%の壁”が簡単に突破され、6月2日に0.251%を記録した後も0.264%まで上昇し、以降連日のように0.25%を超える状況となったことは記憶に新しい(7月以降は概ね0.25%以下に誘導されている)。
これは日銀が指し値オペを実施すると連日大量購入することになるから、皮肉なことに国債市場にはさらに日銀が買い入れるだけの新発10年物がほぼ残っていないという状況となり、金利推移にそれ以上影響を与えられなくなったことを意味している。金利操作の限界が露呈したという見方もできるだろう。まさに現在の日本の金利政策は国が発行した国債を、ほぼ全額日銀が買い取るという事実上の“財政ファイナンス”によって支えられていると言えるのかもしれない。