「モノがぼやけて見える」「視力が下がってきた」「目がかすむ」――気になる目の症状があっても、「まあ大丈夫だろう」と、そのまま放置していないでしょうか?
目の疾患には、自覚症状がないまま進行して、気づいたときには失明寸前になるものがいくつもあります。そこで参考にしたいのが、『ハーバード × スタンフォードの眼科医が教える 放っておくと怖い目の症状25』(ダイヤモンド社)。本書の著者はハーバード大学とスタンフォード大学に計11年在籍し、世界的権威の2大科学誌『ネイチャー』『サイエンス』に論文が掲載されたスーパードクターで、近ごろ始めたYouTubeでは視聴回数100万突破の動画があるなど注目を集めています。本書の噂を聞きつけて全国各地から来院する患者が後を立たない眼科クリニックの院長が、患者さんによく聞かれる質問をベースに、Q&A形式でわかりやすく放っておくと怖い眼の症状を解説します。
※本稿は、『ハーバード × スタンフォードの眼科医が教える 放っておくと怖い目の症状25』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
失明原因トップ!「緑内障」
間違いだらけの目の常識[2]
緑内障になると視野が欠ける?
「緑内障になると視野が欠ける」というのは、検査結果上は間違いではありません。でも、緑内障では末期に近づくまで視野が欠けることを、患者さん自身がハッキリと自覚することは、ほぼありません。かなり進んだ人でも「薄暗いところでスマホが見にくい」という自覚がある程度です。もしくは、まったく無症状なことも少なくありません。
そのため「緑内障になると視野が欠ける」と信じて、「自分は視野が欠けていないから大丈夫」と思い込んでしまうと、その後に「視野が欠けている?」と気になり出したときには、失明寸前の末期ということにもなりかねません。
自覚症状がほとんどない
そもそも、人間の視野には必ず1ヵ所、しかも中心のすぐそばに盲点(マリオット盲点)があり、健康な目でも片目で見ると見えない部分が存在します。しかし、片目で見えない場所があっても、反対側の視野がカバーしていたり、映像や記憶により情報が補われたりして、気づきにくいのです。生まれつき、中心のすぐそばに盲点があるのに、そのことを普通は一生気づくことがありません。
緑内障の初期に中心から離れたところが見えなくなっていても、気づけるはずがないのです。実際に私のクリニックで緑内障と診断された患者さんでも、「視野が欠けている」という自覚症状があった人は、ほとんどいません。
緑内障が進行しているのに「視力1.2」の女性
網膜の中心部には、モノを見るために重要な視細胞が集中している「黄斑部」という部位があるといいました。その黄斑部は、直径わずか1mmですが、モノの大きさや色、形など「視力」のほとんどを担っています。
失明原因ナンバーワンの緑内障は、この黄斑部からは遠く離れた周辺視野から始まることがほとんどです。黄斑部以外の部分は、視力としてはそもそも0.1程度しか見えていません。そのため、見えない範囲が少しずつ黄斑部をとり囲むように広がっても、気づくことはほとんどないのです。
黄斑部がダメージを受けていなければ、視力は維持されます。私のクリニックの患者さんでも、緑内障がかなり進行していたにもかかわらず「視力は1.2ありますから、見えづらくないです」と、まったく緑内障に気づいていなかった女性もいました。こうした例は、実はたくさんあるのです。
進行を遅らせることしかできない緑内障
緑内障は自覚症状がないまま悪化していき、失明に至る恐ろしい病気です。そして、原因が特定されていないため、治療で完全には治すことはできません。私たち眼科医ができる最善の対策は、早期に発見して、できるだけ進行を遅らせる治療をすることしかないのです。
「なんだか見え方がおかしい」と感じたら、「視力は落ちてない」「健康診断で眼圧が高くなかった」などと様子見をせず、とにかく一度、眼科で検査を受けてほしいのです。また、たとえ見えづらいといった自覚がなくても、大切な視力を守るために、年齢に関係なく年に1度は、最寄りの眼科で定期検診を受けることをおすすめします。
とにかく、緑内障を他人事だと思ってはいけません。緑内障は20人に1人は抱える「国民病」なのです。
【次回に続く】 ※本稿は、『ハーバード × スタンフォードの眼科医が教える 放っておくと怖い目の症状25』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。ぜひチェックしてみてください!