中国BYDが乗用EVで日本市場に挑戦、攻略の鍵を握る「独自の強み」とはBYDが日本に2023年に導入する、「ATTO3」(写真手前)と「DOLPHIN」 Photo by Kenji Momota

中国の自動車メーカー、BYD(ビーワイディー)が2023年1月から日本で乗用EVの新車販売を正式に始める予定だ。BYDでは米EVメーカー、テスラのように、日本でメジャーブランドになるのか?中国EV産業界の歴史からBYDの可能性を考察する。(ジャーナリスト 桃田健史)

日本人にはなじみの薄い中国車だが
実力がグローバル基準に達したメーカーも

 中国のBYDは2022年7月に記者会見を開き、2023年から日本で乗用電気自動車(EV)を発売すると発表した。

 SUVの「ATTO3(アットスリー)」、コンパクトカーの「DOLPHIN(ドルフィン)」、そしてセダンの「SEAL(シール)」の3モデルの順で、23年内に市場に投入する。

 BYDはすでに、EVバスを日本で発売しているが、乗用EV販売事業を行うBYD AUTO ジャパンを新設した。

 中国自動車メーカーといえば、中国地場大手の第一汽車が21年12月、大阪のなんばでプレミアムブランド「紅幅(ホンチー)」のショールームをオープンしたことが、テレビやネットで大きな話題となったことが記憶に新しい。

 こうした中国車に対して、日本人の多くは品質や走行性能など、クルマの本質に対する不安を感じる人が少なくないだろう。

 なぜならば、中国に自動車産業が本格的に成長し始めたのは、2000年代半ば過ぎとまだ歴史が浅く、また中国メーカーは中国国内での販売が主体で輸出量が少ないため、中国国外で中国車を見かけることが比較的少なく、多くの日本人が中国車になじみが薄いからだ。

 とはいえ、改めて世界の自動車市場を俯瞰(ふかん)してみると、いまや中国は欧米や日本をはるかにしのぐ、世界最大の自動車製造・販売大国というのが現実である。

 国際自動車工業連合会によると、21年の国別生産台数は、第1位の中国が2608万台で、第2位アメリカの932万台の2.8倍、また第3位日本の785万台の3.3倍であり、中国市場がいかに大きいかが分かる。

 また、販売台数では、中国が2627万台、アメリカ1541万台、日本445万台であることから、中国は地産地消型、アメリカは輸入依存型、日本は輸出依存型の市場構造であることも分かる。

 中国での自動車製造・販売台数が増加する中で、クルマの品質や走行性能もグローバル基準に達しているメーカーが増えているのが実状だ。

 そうした中で、第一汽車やBYDのように、一部の中国自動車メーカーが海外進出の動きを見せてきたというわけだ。

 なかでもBYDは、海外市場に対してEV事業で積極的な姿勢を示す。